大いに脈ありだったのに

蒔岡家三女・雪子と医学博士・橋寺氏との縁談。内気な雪子はしかし、せっかくの橋寺氏からのデートの誘いを断ってしまいます。

姉の幸子は、今回ばかりは怒りを抑えることができません。

まして橋寺が
そんな電話を
懸けて来たと云うのは、

あの人として
大奮発したであろうに、

これまで結婚の意志表示がハッキリなかった橋寺氏、蒔岡家をヤキモキさせていました。

それをそっけなく
あしらわれては

どんなにか
落胆したことであろう。


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妹に状況を確認する幸子

「そんなら、断ってしもたん?」

「ちょっと差支えが
ございますので、
云うといたけど。………」


いかにも雪子さんらしい、気の利かない答えです。
幸子はこう感じます。

断るにしても
尤もらしい口実を構えて

言葉上手に断ったのなら
まだしもであるが、


せめて明るくハキハキと、嬉しそうな感じが伝わればですが…

そんな芸当の出来る
人ではないので、

さぞ不細工に、
取って附けたような
挨拶をしたことと思うと、

幸子は何がなしに
口惜し涙が溢れて来た。


今回の縁談は、申し分のないお相手ということで、蒔岡家総がかりで段どってきたもの。

家族顔合わせも済んだ翌日のトラブルだけに、この先どう収拾していくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



橋寺氏の様子はこちらから

サンマリHPから