東京駅で井谷の娘と待ち合わせ

雪子の新たなお見合い相手は子爵家の御牧実(みまきみのる)氏。渡米前の忙しい中、井谷が帝国ホテルでセッティングの労をとっています。お見合いを兼ねた井谷の送別会に出るため、蒔岡家の姉妹たち東京駅に降り立ちました。

駅には、井谷の娘・光代が迎えに来ていて駆け寄ってきます。

ああ、雪子お嬢さんに
こいさんでいらっしゃいますね。 
あたくし光代でございます。


こいさんとは、末っ子の妙子のこと。

幸子たちは、
この娘がまだ
神戸の県立第一高女に
通っていた時分に、
一二度見かけている
くらいであろうか。

その頃から見ると
すっかり垢抜けが
しているので、


光代は卒業後、東京の雑誌社に勤めています。

先方から名のって
くれなかったら、
ちょっと
分りそうもなかった。

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 1937年(昭和12年)当時の東京駅を行きかう人々。東京駅で姉妹たちが光代と会ったのは1940年のこと。
※ジャパンアーカイブスから転載


キャリアウーマンの光代の様子

神戸で有名な高級美容院を経営していた井谷。
母の血を引いて、光代も相当テキパキとした性格のようです。

光代の方は
いかにも
母親の云う通り
コマシャクレて
貧弱に見える。


昔は蒔岡家の妙子のように、ちょっとふっくら肉付きの良い方が好まれたようです(^^;

それが又、
物云いだけは
可笑しいほどに
井谷に似ていて、

早口にぺらぺらと
まくし立てる工合は、
マセた子供の感じ
なのであるが、


光代のアテンドで姉妹たちはこれから帝国ホテルに向かいます。

雪子は自分より
十も年下の小娘から、
「雪子お嬢さん雪子お嬢さん」
と呼ばれるのが、
擽ったくもあり
気持悪くもあった。

このあたり、年を重ねた独身女性の悲哀ですね (-_-;)
子どもだった光代も、すでに社会人となっていました。
どんどん若い世代が東京で活躍をし始めています。

未だ親族のすねかじりで過ごす、30代雪子と40代御牧実氏のお見合い。

はたしてうまくいくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。


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