婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

2020年11月

お相手も負けじと見た目に注文…

結婚する前から「夫に先立たれた時のこと」を考えている雪子。

そのお相手の瀬越氏ですが、それなりのエリートサラリーマン。パリでの仕事経験もあります。なのにプライドの高い姉妹たちから、あれこれ注文をつけられて気の毒な感じです。

しかしそこはお見合いの強み。
瀬越氏の方も、仲人役の井谷に、存分に本音トークしていました。
彼の希望はこんな感じ↓

しとやかで、
大人しくて、
姿がよくて、

和服の着こなしが上手で、
顔立も勿論だけれども、

第一に
手足のきれいな人がほしい
と云う注文なので、


40歳過ぎ・初婚の男性から「手足のきれいな人」希望って…(^^; 
女性はなかなか引きそうです。

そしてこの瀬越氏、パリに赴任したことでかえって近代的な感じの人より「古典的」な感じの人を求めていたために、結婚が遅れたとのこと。

褒め言葉としては微妙な気がしますが、和風美人の雪子は、写真の段階で気にいられたようです。

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楚々とした雪子さんですが…

お宅のお嬢様なら打ってつけだと思うのであるが、…


こういう時、やはり美人は得ですね。

しかし、ここで問題がひとつ発生。
付き添いの実姉が、華やか系の「近代的」美女だったのです。

奥さんの方は
又非常にぱっとした
派手なお顔だちで、

それでなくても
人目につき易くって
いらっしゃるから、


仲人役の井谷から当日は「地味な装いで」と忠告される姉・幸子。

どうか明日だけは、
十も十五も
老けてお見えに
なるようにして、

精々お嬢さんを
引き立てて
お上げになって下さい。

お見合いの席では、やっぱり女性を、最大限キレイに見せることは必須です。

でないと、
奥さんが附いておいでに
なったばかりに

纏まるものも
纏まらないでしまう
なんてことが、ないとは
限りませんからね。

相手を注意しているような、褒めあげているような、妙な仲人のセリフですね。

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同じ美女でもタイプが違うと… photo by さとます

それにしても、女性側は相手の「財産」を気にして、
男性側は相手の「容貌」を気にする。

このあたりは今も昔も、あまり変わらない感じです。

こればっかりは、だから「失礼な!」とあまり怒らない。

「まあ、そんものか」と男女とも淡々と構えて、まずは、井谷のような仲介者のアドバイスに従っておくのが無難だと思います。

さて、そうして迎えた当日。

今日のお見合いが、家の使用人たちにバレていたことで、ひと騒ぎもちあがるのですが…それはまた次回に書いてみたいと思います。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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あきれるかと思いきや

さて、お見合い相手にこんなことを要求してる雪子さん ↓

此方が
未亡人になる
可能性も
多いことだから、

大した財産は
要らないにしても、

老後の生活を
保証するだけの
用意のあることが
望ましいと
云っていたが、…

本家はこれにあきれるかと思いきや、こんな感じです。

この後の注文は
本家や分家の者達も
至極尤もなこととして、
条件の一つに加えていた。

「しごく、もっとも」と言えるのは、公的な視点から考えると、戦前の家制度のなせるわざでしょうか。

ウィキペディアによると、家制度とは、1898年(明治31年)制定の民法で規定された家族制度。戸主(たいていの場合は夫)は、家族に対する「扶養義務」を負います。

戸主は偉そうに振舞えるかもしれませんが、男性の稼ぎが全てですから、なかなか大変な役割ですね。子どもの結婚にも、戸主の管理能力が問われるわけです。

また私的な視点から言えば、雪子のように極端に内気な人間は、家族がよってたかって?結婚の段取りをしなければ、とてもお相手を見つけることができません (^^;

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人づきあいができない雪子さんがお相手を見つけるには… photo by 灘伏見

雪子さんの生存戦略?

家制度のメリットを、ぞんぶんに享受している雪子さん、だから表向きはしおらしく、実はずいぶんストレートに、自分の希望を口にしています。

どうも、この30過ぎのお嬢さま、ただの内気な「ことなかれ」ではなく、「こうしたい」という意志は、ちゃんと持っているようです。

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徹底的に受け身なら家族は苦労しないのですが photo by さとます

見た目はきゃしゃで胸の病をもっていそうと、思われがちな雪子ですが、

それでいて
消極的な抵抗力は
最も強く、

家じゅうの者が
順々に流感に
感染するような時でも

彼女だけは罹らずに
しまうと云う風で、

今までついぞ
病気らしい病気を
したことがなかった。


というツワモノです…

さて、改めてお見合い相手の瀬越氏ですが、ルックスから財産まで、蒔岡家の姉妹たちにいろいろケチをつけられています。

しかしなかなか、男性側も負けずに注文をつけていました。

このことは、また次回に書いてみたいと思います。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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実は本音トーク全開の雪子さん

結婚相手の条件をゆるめ始めた「本家」ですが、雪子はどんな感じなのでしょうか。

雪子は
義兄達や姉達の
意見が一致した時なら、

何処へでも
云われるままに
縁づくと云ってい、

それらの条件にも
不服を唱えは
しなかったけれども、…

婚活で「言われるままに」とは…とても謙虚だなと思ってしまいます。

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家長の言うままにお嫁に行くと言っていますが…

ところが雪子の「謙虚」はなかなか一筋縄ではいきません。

続けてこんなことを言っています。

四十何歳と云う年の人を
夫に持つのだとすれば、


もうその人の立身の限度も
大凡そ見えていて、


さきざき収入が殖える当ても
少ないことだし、


ダブルワークでがんばると言ってくれている、お相手の稼ぎにケチをつけていますが…

此方が未亡人になる
可能性も多いことだから、


ここまでくると雪子さん、11歳年上がイヤ、というのが本音でしょうか。

大した財産は
要らないにしても、


老後の生活を
保証するだけの
用意のあることが
望ましいと云っていたが、…

うーん、なんかすごい (^^;

これから私が見合いする相手は、出世しなさそうだし、先に死んじゃいそうだし、と身もふたもない感じの冷静さですね。

「だから財産は欲しい」ということなのですが、この強気の希望が「何処へでも云われるままに縁づく」という謙虚な姿勢と、何の矛盾もなく同居しているところがスゴイ。

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嫁入り前に考えているのは、夫に先立たれた時のこと photo by kakkiko


老後、働かなくても暮らせるだけの貯えって、けっこう「大した財産」だと思うのですが…

雪子は、どうも気ままな実家暮らしに愛着があって、「夫婦二人」で暮らすイメージが描けていないようですね。

こんな雪子の希望を、本家はどう思ったのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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本家もあきらめ始めました

雪子が30代に入り、旧家・蒔岡家の威光も失われている日々。お見合いの仲人役・井谷からも「このあたりでお決めにならないと」と言われています。

そして「本家」も結婚相手の条件のハードルを下げ始めました

この「本家」とは、蒔岡家の長女・鶴子が、養子縁組で夫を迎えた家庭です。現在、鶴子夫婦は東京在住

本来、未婚の雪子や妙子は、東京の本家に一緒に住まうのが筋です。

しかしこの妹たち、居心地のいい関西のお屋敷(二番目の姉夫婦の家)にパラサイト、気ままに日を過ごしております。

それやこれやで、
だんだん
兄や姉たちも

そうむずかしい条件を
出しては無理だ
と云うことが分って来、


戦前は、30歳を過ぎるとほんとにマッチングが難しかったのですね

此方は
初婚なのだから
先方も
同様でなければ
と云っていたのが、

二度目の人でも
子供さえなければ
と云い出し、

再婚者でもOKだよ、と理解を示しました。
さらにハードルは下がります。

次いで子供も
二人までなら
と云い出し、


子持ちもOKになりました…

さとますさん
雪子は姪っ子をかわいがっています photo by さとます

そして、とうとう見た目だけが条件に(^^;

年も
二番目の義兄
貞之助より
一つや二つ
上であっても


外見が
老けてさえ
いなければ、

と云うところまで
折れて来るようになった。

「外見が老けてさえいなければ」と、どんどん、ゆるんできた本家の意向

瀬越氏は今の状況なら最良のお相手

何はともあれ、ここまで本家がハードルを下げている中、瀬越氏なら、条件的にふさわしいお相手でしょう。この時代の価値観はとくに「初婚」に重きをおいていること。

外に少しぐらい
不満足なところが
あっても、

初婚の一時は
それらの総べてを
補って余りあるもの
であった。


現代では、30代以降の男性の婚活は「再婚者」が優位になっていきますが…

雪子さん自身は内心、どう思っているのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。


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