さて、ようやく野村氏との縁談に決着?がついた蒔岡家。
その当事者の雪子さん、現在は長姉・鶴子夫婦のもと、東京で暮らしています。雪子の世話は、本来「本家」がするものとされての同居でした。
ただ、本人は東京で暮らすのがイヤでしょうがありません。
縁談のために関西に戻ったのですから、縁談が済めば帰るのが筋です。でも毎年恒例の「京都の花見」に一緒に行きたいのか、滞在を引き延ばしているようです。
雪子はそれまでに
帰るのやら
帰らないのやら、
例の一向
はっきりともせずに
ぐずぐずしていて、
何事にもあいかわらず、はっきりしない雪子さんです。
結局土曜日の朝になると、
幸子や妙子と同じように
化粧部屋へ来て
こしらえを始めた。
どうも花見には行くという意思表示のようです。
そして、
顔が出来てしまうと、
東京から持って来た
衣裳鞄を開けて、
一番底の方に
入れてあった
畳紙を出して
紐を解いたが、
何と、
中から現れたのは、
ちゃんとそのつもりで
用意して来た
花見の衣裳なのであった。
行くと決めていたなら、早くそう言えば良さそうなものですが…
姉と妹はよき理解者のようです
妹の妙子はその様子を面白がります。
何やいな、
雪姉ちゃんの
あの着物を
持って来てたのんかいな
雪子ちゃんは黙ってて
なんでも自分の思うこと
徹さな措かん人やわ
―見てて御覧、
今に旦那さん持ったかて、
きっと自分の云うなりに
してしまうよってに
気に入らないお相手の縁談は断り、京都の花見にはしっかり参加する雪子さん。
内気でも彼女なりのスタイルを貫き通しているようです。
※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。
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