婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

2021年04月

お見合い後にまた春が巡ってきて

さて、ようやく野村氏との縁談に決着?がついた蒔岡家。

その当事者の雪子さん、現在は長姉・鶴子夫婦のもと、東京で暮らしています。雪子の世話は、本来「本家」がするものとされての同居でした。

ただ、本人は東京で暮らすのがイヤでしょうがありません。

縁談のために関西に戻ったのですから、縁談が済めば帰るのが筋です。でも毎年恒例の「京都の花見」に一緒に行きたいのか、滞在を引き延ばしているようです。

雪子はそれまでに
帰るのやら
帰らないのやら、

例の一向
はっきりともせずに
ぐずぐずしていて、


何事にもあいかわらず、はっきりしない雪子さんです。

結局土曜日の朝になると、
幸子や妙子と同じように
化粧部屋へ来て
こしらえを始めた。

どうも花見には行くという意思表示のようです。

そして、
顔が出来てしまうと、

東京から持って来た
衣裳鞄を開けて、

一番底の方に
入れてあった
畳紙を出して
紐を解いたが、

何と、
中から現れたのは、
ちゃんとそのつもりで
用意して来た
花見の衣裳なのであった。

行くと決めていたなら、早くそう言えば良さそうなものですが…

ゲタゲタ

姉と妹はよき理解者のようです

妹の妙子はその様子を面白がります。

何やいな、
雪姉ちゃんの
あの着物を
持って来てたのんかいな


と、妙子は幸子の身支度を手伝いながら、彼女がいない隙にそう言いました。姉の幸子も応じます。

雪子ちゃんは黙ってて
なんでも自分の思うこと
徹さな措
かん人やわ

―見てて御覧、
今に旦那さん持ったかて、
きっと自分の云うなりに
してしまうよってに

気に入らないお相手の縁談は断り、京都の花見にはしっかり参加する雪子さん。

内気でも彼女なりのスタイルを貫き通しているようです。

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※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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ようやく先方に「お断り」を伝えました

お見合いを順延したあげく、ようやくのお返事が「お断り」の蒔岡家。「女心がわかっていない」というのが、雪子さんの言い分です。

姉の幸子は、野村氏との縁談話を仲介した陣場夫人を訪ねて、その旨を伝えました。

幸子はかねて
考えていた通り、

本家が不賛成だから
と云うようなことで、

婉曲に断りの意味を
通じて帰って来たが、


お断り理由を、本家のせいにしていますね (^^;

雪子には、
円満に話をして来たと
云っただけで
委しいことは云わず、

雪子も別に
聞こうともしなかった。


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この縁談後、しばらく雪子さんのお見合いは途絶えます


今回の縁談の仲介者・陣場夫妻は、関西電車の浜田社長の世話になっていました。野村氏はその社長の従兄です。陣場夫妻としては、この話をまとめれば、浜田社長の、恩義に報いることができたのですが…

逆にどんな気まずい立場に置かれたかは察せられます。

さすがに後日、こんな反応が返ってきました。

陣場からは
その後の節季に
この間の北京楼の勘定書を
封入して来て、


カメラ兄さん (3)
お見合いは高級中華料理店での会食スタイルでした

お見合い費用も全額、野村氏側が負担していたのですね。

勝手ながら
この半額を受け持って
戴きたいと云って来たので、


これまでの経緯から、
蒔岡家側がこの際に「全額持ちます」と、申し出てもいいぐらいかと思うのですが…

折り返して
為替を送ってやり、
それでこの縁談は
打切りになった。


言うとおりにして、終わってしまったようです。

心配なのは、狭い上流社会のなかで、この顛末が、芳しくないうわさとなって広がること ― 今後、雪子さんに他の縁談は持ち込まれるのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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妹に明かした理由は、その無神経さ?


お見合い相手の野村氏について、どうしても「お断り」したい雪子さん。

妹の妙子に、その理由を語っていました。
妙子はそれを受けて、次女の幸子にこう報告しています。

雪姉ちゃんの云うのには、
二度目と云うことを承知で
嫁に行くにしても、


お相手が再婚者であることはクリアしていましたが、

先妻やその子供達の写真が
飾ってあるのを見せられて

好い気持がする筈は
ないではないか、


初婚の女性としては、やはり生理的に受け付けないものがあったのですね。

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雪子さんも理解を示そうとはしてます。

今は独身でいるのだから、
密かにそう云うものを飾って
その人達の冥福を祈る心情は
分らなくはないが、


妻と子どもに先立たれた境遇の野村氏ではあるのですが…

あたしに
家を見て貰おう
と云う時に、

何もそんなものを
見える所へ
出して置かなくとも
よさそうなものだのに、


男性としては、気が回らなかったのでしょうが

あの人は写真を急いで
隠しでもすることか、

わざわざあれが飾ってある
仏壇の前へ案内するとは
何事だろう、


完全に価値観が食い違いました (-_-;)

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生理的に受け入れられないものがあると


あれを見ただけでも、
とても女の繊細な心理などが
理解出来る人ではないと思う、

と云うので、
何よりそれで
愛憎を尽かした
ように云っていた、…


雪子さんのご機嫌を、お見合い当日にすでに損ねていた野村氏でした。

ただ、それならそうと、立ち会った姉に早く「お断り」と言えばと思うのですが…親代わりの次女の幸子は、この後どう対応していくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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縁談を断る実の理由は…

お見合い相手にお返事もせず、妹と出歩いていた雪子。そして、ばったりと、そのお相手の野村氏に出会ってしまいます。

妹の妙子は、その時の印象をこう語ります。

妙子も
野村と云う人を
初めてみて、

話に聞いたよりも
まだ老けているのに
びっくりし、


見た目でどこまでも、損をしている46歳の野村氏です。

なるほど
このお爺さんでは
雪姉ちゃんが
厭だと云うのも
当り前だと
感じたくらいで、


20代の妙子は、年上男性により手厳しい表現です (^^;

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しかし姉が、お相手を嫌がる理由はまた別にありました。

雪姉ちゃんの嫌う理由は
そこにあるに違いない
と思うけれども、

雪姉ちゃんは
風采や顔つきのことなどは
別に何とも云っていないで、
それよりは、


返事を渋る理由は、見た目ではなかったようです。

雪子さんが言うには…

見合いの晩に青谷の家へ
引っ張って行かれた時、

仏壇に亡くなった奥さんや
子供達の写真が
飾ってあるのを見て、

ひどく不愉快にさせられた
と云う話をした。


photoB

初婚の女性がお見合い当日に、仏壇に飾られた先妻の写真を見せられる…確かにいろいろと、思うところが出てきそうです。

ましてや、いつまでも少女のような雪子さん、なおさら心に響いてしまったのは、わかるのですが…

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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30過ぎても男性慣れしない雪子に…

お見合いのお返事もしないで、妹と遊び歩いていた雪子さん。

運悪く?そのお相手の野村氏に、街でバッタリ出くわしてしまいます。ただでさえ内気な雪子さんの慌てぶりを、妹の妙子が次女の幸子にこう報告しています。

何せ雪姉ちゃんの
慌て方云うたらないねん、

あんじょう
断り云うたらええのんに、
あのう、あのう、云うて
ウロウロしているねんもん


幸子もその時の様子がよくわかるようです。

雪子ちゃんそんな時に
てんとあかんねんわ。

あの歳になっても
十七八の娘と一緒やねん


幸子はこの機会にと、妙子から、雪子の気もちを聞こうとします。

雪子ちゃん
あの人のこと
どない思うてるんか、
なんぞ云うてえへなんだやろか、


TicTac

言われれば、どこへでも嫁ぐといいながら…

雪子は野村氏との遭遇後、妹の妙子にこう話していました。

縁談のことは
姉ちゃんと中姉ちゃんに
任してあるさかい、

行け云われたら
何処へなと
行くつもりやねんけど、


いつも「言われたとおりにします」という雪子さん、でも…

あの人のとこだけは
よう行かんさかい、

えらい我が儘
云うみたいやけど、


最後は我を通します (-_-;)

どうぞこれだけは
断ってくれるように、

こいさんから
中姉ちゃんに
云うてほしい云うて、
頼まれててんわ、…


お相手へのお見合いのお返事を、待たすだけ待たせている雪子さん、しまいには自分から言わないで、妹に代返を頼んでいる始末。

しかも、もうしっかり、結論は出していたようです。

その理由とはなんだったのでしょうか?

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※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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お返事もせず遊んでいたら

野村氏とお見合いし、その後いまだ、お返事を返していない雪子さん。

そんな蒔岡家の三女は、四女の妹・妙子と「縁談のことなど全く念頭にない」様子で、連日の街歩きを楽しんでいます。

ある日、二人が元町のスズランで洋菓子を買っていると、なんと野村氏と遭遇してしまいました。妙子は後日、姉である次女の幸子に、次のように報告しています。

その時の雪子さんの様子はというと…

「来たはるねんが、来たはるねんが」
と、ソワソワと
しているだけなので、
何のことやら
分らずにいると、


内気な雪子さん、パニックを起こしているようです。

奥の喫茶室で
珈琲を飲んでいた
一人の見慣れない老紳士が、

その時つかつかと
雪姉ちゃんの所へ
立って来て、

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この老紳士が野村氏でした。
慇懃に挨拶をした野村氏は、二人をお茶に誘います。

雪子の方はというと…

「あのう、―  あのう、―」
とヘドモドするばかりなので、

「如何です」と、
二三度そう云いながら
立っていたが、

とうとう断念したらしく、
「や、大変失礼いたしました」
と、丁寧にお辞儀をして
又行ってしまった。


お相手としてはどんな気持ちに?


さて、この野村氏の一連の対応、なかなかに礼儀正しい紳士ぶりです。

蒔岡家の姉妹からは、ひたすらお爺さん呼ばわりですが、ハイカラな洋菓子店で、ひとりコーヒーを飲んでいるあたり、雪子さん好みのセンスもありそうです。

野村氏としては、結婚したい雪子さんにバッタリ会えて、とても嬉しかったと思います。

しかし、一向にはっきりしない(そして嬉しそうでもない)雪子さんを見て、どんな気持ちで店を後にしたのでしょうか。

このままでは、先方から「お断り」必須と思えますが…これはまた次回に書いてみたいと思います。

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姉妹が歩いた元町通にあったモダンなスズラン灯。昭和十七年、第二次大戦の戦力増強の供出で、その姿を消しました。

※写真と解説は「元町マガジン」より 昭和初年の元町夜景(「こうべ元町100年」より)

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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お見合いのお返事はしないまま?

順延続きの後、ようやく実現した雪子と野村氏のお見合い。

しかし蒔岡家の姉妹たち、最初から「お断り」のつもりで臨んだうえに、その後何日も経つのに、いまだお返事をしていないようです。

何をしているかというと…

幸子はこの内気な妹が、
見かけに依らず
出好きなことを
知っているので、

自分が出歩ける
ようになったら、


姉の幸子は、体調を崩したまま元にもどっていません。

映画やお茶の
附合いぐらいは

毎日でもしてやるのだがと
思っていたのであるが、


こうやって甘いので、気ままな実家暮らしが続いてしまうのではと思いますが…

雪子はそれを
待ち切れないで、

この間から
天気の好い日には
妙子を誘って
神戸へ出かけて行き、

何と云うことなしに
元町あたりをぶらついて
帰って来ないと、
気が済まないらしかった。


姉と遊べないなら、近所に暮らす妹と遊ぶ雪子さんです。

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そして、いつでも、
松濤アパートの妙子を
電話へ呼び出して、
落ち合う先を
打合せてから、

いそいそと
出かけて行くのが
さも楽しそうで、


人生楽しいのはいいことですが…

縁談のことなど
全く念頭に
ないようであった。


もう結婚する気がないのなら、せめてお相手にお返事だけでもと思います。

野村氏の方は、どんな気持ちで待たされているのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。


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姉としては、この結婚の行く末を…

お見合いを済ませた妹の雪子に、野村氏との結婚についてどう思うか尋ねた幸子。

雪子の答えは「好き勝手させてもらえるなら、まあいいか」と、なんとも消極的なものでした。

姉はこう感じます。

そんな考で
結婚されたのでは

貰う方が
遣り切れないであろうが、

あのお爺さんの様子では
それでも
構わないから
来て下さい
と云うかも知れない、


すっかり惚れた弱みですね。
しかしこう「お爺さん」と連呼される野村氏は、ほとほと気の毒な感じです。

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結婚しても、心ここにあらず?


結婚しさえすれば情もわくかもと


そして姉の幸子は「雪子ちゃんのことだから」と、こうも考えます。

口ほどにもなく
あのお爺さんの
情愛に絆されて、

此方のことなんぞ直きに
忘れてしまうかも知れず、

そのうちに子供でも
出来るようになれば
尚更である、


大変なのは、新しい生活に入るまで、それが日常になれば十分ありえることです。

そして…

婚期に遅れて
困っている妹を

それほどに
懇望してくれるのは、


考えように依っては
有難いことで、


まったくその通りです。

頭から嫌ったりなどしては
勿体ないようでもある、…

ようやく客観的な判断がでてきました。
現代でも30代婚活はそれなりに厳しい。

年の差があっても、見た目がイマイチでも、「好きだ!」と言ってくれるお相手は、大事にするに越したことはありません。

さて、今回のお見合いのお返事、どうするつもりなのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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