婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

2021年09月

妹の今後を案じる姉の憂い

不本意に終わったお見合い
の後、蒲郡駅で雪子と別れた姉の幸子。帰路の電車内で、縁遠い妹・雪子の行く末を案じていました。

ジュンP

今回のことを思い返すと…

あの見合いの席での
戦々兢々とした、
いじけた気持は、
どうしたと云うのであろう。


お相手の名古屋の富豪・沢崎氏は、雪子に興味を示しませんでした。

今迄は
雪子と云うものを、
何処へ出しても
恥かしくない妹として

人に見せびらかす
気見合いであったのに、

美人な雪子さんの二十代には、たくさんの縁談話がありました。しかし今回のお見合いでは、雪子さんの顔のシミが目立ってしまい、

どう考えても
昨日は此方が「受験者」で、

沢崎が「試験官」
だったではないか。


蒔岡家は見合いの席で「値踏み」されるという初めての経験をしたようです。

さくら旅人

旧家の威光も、雪子の年齢も移ろい

そして蒔岡家の次女・雪子は、はっきりとこう感じます。

だが一つ確かなことは、
もうこれからは

今迄のような
優越的態度を以て
「見合い」することは
出来ないのであった。


お見合いは本来「ご縁」を大切にする場。出会えたことを感謝するぐらいの姿勢が、お相手には好印象だと思うのですが…

勝負の場としてきた蒔岡家にとっては、初の手痛い敗北だったようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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沢崎氏とのお見合いが済んで、名旅館・常磐館に遊んだ蒔岡家の姉妹たち。その後、蒲郡駅で雪子と幸子は別れます。ここからは、芦屋に向う電車内の姉・幸子の様子です。

※東京に向う妹・雪子に起きた出来事は「雪子のお見合い④番外編」をお読みください。


妹を案じる姉の幸子の思い

不本意に終わったお見合いの後、駅で雪子と別れた幸子。電車内で姉として、妹のことで心を痛めています。

駅での妹・雪子の様子はというと…

ひとりプラットフォームに立って
しょんぼり此方を
見送っていた姿、

今日も目の縁の翳りが
昨日ぐらいに目立っていた
やつれた顔、などが

いつ迄もいつ迄も、
消えずにいたが、


30歳を過ぎて顔にシミが出てきた雪子さん。美人であるだけに、家族は皆心配しています。

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それにつれて
あの苦々しかった
見合いの印象が、

又しても
よみがえって
来るのであった。


お見合い相手である名古屋の富豪・沢崎氏は、雪子に関心を示しませんでした。


今までと立場が逆転して?


これまでも、妹のお見合いに立ち会ってきた幸子ですが…

今度のような
略式のものまで数えれば、

五六回では
利かないような
気がするのであるが、

でも今度ほど、
此方が引け目を感じた
ことはないのであった。


30歳を過ぎてから、どうも勝手が違ってきたようです。

今迄はいつも
此方が上であると云う
自信と誇りとを持って臨み、

先方は只管
此方の許可を
願っている
と云う風であったが、


強気で「お断り」を繰り返していたようですね (^^;

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花の盛りは短くて…  photo by ひろ1960

いつも此方が
「不許可」を称えて

先方を「落第」させてばかり
いたのであったが、

今度は第一歩から
此方が弱気にさせられていた。


2年3か月ぶりのお見合いということで、縁談を断り切れなった蒔岡家。結果は後味の悪いものとなってしまったようです。



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このままではもったいない人のチカラになります


お断り後の気もちはというと

旅行帰りの電車で、10年以上前のお見合い相手・三枝氏と偶然に乗り合わせた雪子さん。

三枝氏が下車した後、お相手に対し「きっと今頃は家督を継いで、子どももいて…」と感慨にふけっています。三枝氏と結婚しなかったことに対し、彼女の今の心境はというと、

負け惜しみでも
何でもなく、

決してその方が
幸福であったと云う
気はしないのであった。


惜しい相手ではないという、その理由ですが、

あんな工合に、
東海道線の
辺鄙な駅と駅の間を、
悠長な普通列車に乗って

往ったり
来たりしつつ
年月を送るのが
あの男の生活だとすれば、

三枝氏は豊橋市屈指の資産家で(豊橋駅からおそらく乗車して)藤枝駅で下車していました。屈指の資産家も、雪子さんにあっては「辺鄙な駅と駅」で片づけられてしまっています (-_-;)

かずなり777

そんな人に
連れ添うて
一生を終るのが
何の仕合せなことがあろう。


とことん田舎と肌があわない、都会育ちの蒔岡家・四姉妹です。

自分はやっぱり
あんな所へ
行かないでよかった、

としか思えないのであった。


安易に「お断り」して、後々ずっと後悔するよりは、良いと思えますが … 美意識の高いまま30代半ばにさしかかる雪子さんの婚活は、かなり難航しそうです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




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お相手に同情はするけれど

旅行帰りの電車で、10年以上前のお見合い相手・三枝氏と偶然に乗り合わせた雪子さん。三枝氏が下車して、ほっとした彼女は、当時のことを回想しています。

父親亡き後、縁談を押し付けてくる義兄に反発して、返事を引き延ばした彼女ですが…

たまたまそんな
家庭的不和の中へ
飛び込んで来て、

兄妹喧嘩の
道具にされたのは
あの男の不運であった。


まったくです。それにしても雪子さん、なんだか他人事のようですね (-_-;)

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自分はそれきり
あの男のことなど

念頭に浮かべたこともなく、
噂に聞いたこともなかったが、


興味がなくて、忘れ去っていた相手でした。

あれから直に誰かと
結婚したことであろうし、

今では子供の二三人も
あることであろう、

そして恐らくは
三枝家の家督を継いで

資産家の主人に
なっているであろう。


雪子さん最初のお見合いから、10年以上の歳月が流れていました。

そしていまだに婚活中の雪子さんですが、はたして三枝氏を「お断り」したことをどう感じているのでしょうか。これはまた次回に書いてみたいと思います。

昭和初期の豊橋駅
昭和初期の豊橋駅:三枝氏は豊橋の資産家でした。




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このままでは「もったいない人のチカラ」になります

あいまいな態度に終始したのは

旅行帰りの電車で、10年以上前のお見合い相手・三枝氏と偶然に乗り合わせた雪子さん。三枝氏が下車して、ほっとした彼女は、当時のことを回想しています。

その当時、縁談を押し付ける義兄の態度に反発した彼女ですが、返事を引き延ばしたことで、その機嫌を損ねます。

義兄がひどく怒ったのは、

自分が「否」と云うことを
早くはっきりと表示せず、

いくら聞かれても
曖昧な返事ばかりしていて、


仲人にもお相手にも、かなり迷惑をかける態度です (-_-;)

最後に退っ引きならない
ところまで来てしまってから、
強情を張り出した点であった。


ほとんどお相手には「承諾」と誤解させたのでしょう。

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「察しろ」と言われても

怒り心頭の義兄から、あいまいな態度を非難された雪子さんはというと、

若い娘と云うものは
嗜みとしても

そう云う返事を明瞭に
人前で云いはしない、


当時の女性に対する保守性を逆手にとっていますね。

自分に行く気が
あるかないかは

大凡そ素振でも
分りそうなものだのに、
と云ったことであったが、


「察しない」あなたが悪いときました。そのうえで本音としては…

ほんとうは、あの縁談には
義兄の銀行の上役の人なども
仲に這入っていることを知って、


職場がらみで持ち込まれた縁談のようです。

義兄を一層難儀な
羽目に陥れるように、

わざと返事を
遷延させた傾きも
ないではなかった。


仕事をしている人にとっては、シャレにならない持っていかれよう。ましては義兄は銀行員です。

父親の没後、急に威張りだした(と蒔岡家の姉妹には見える)義兄の態度から、三枝氏との縁談は紛糾しているようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




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このままではもったいない人のチカラになります

義兄の態度にも反感があって

旅行帰りの電車で、10年以上前のお見合い相手・三枝氏と偶然に乗り合わせた雪子さん。

三枝氏が下車して、ほっとした彼女は当時のことを回想しています。彼女が三枝氏との縁談を「お断り」した理由は、仲介役の義兄の態度でもあったようです。

あれは父が亡くなって
間もない頃のことで、 


姉妹の父親・蒔岡家の当主は、大正14年(1925)年の12月、54歳で脳溢血で亡くなりました。(母親はそれ以前に37歳で逝去)

その父親亡き後…

自分達は、
それまで小さくなっていた
義兄が急に威張り出したのに
反感を持っていたところへ


長女幸子の夫は婿養子ですから、それまでは気兼ねがあったのでしょう。

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兄の権力で無理に
あの縁を押し着けようとし、

圧迫すれば
思い通りになる女だと云う風に
甘く見てかかっている様子なのが、


見た目ははかなげな雪子さんですが、実はかなり強い意志の持ち主 (^^;

自分は勿論、
中姉にも妙子にも
癪に触って、

三人が同盟した形で
義兄を困らせたのであった。


こうなると義兄という人が、少し気の毒な気がしてきます。

旧家を継いだ責任感で、当主らしく振舞おうとして、姉妹たちに逆効果になってしまったのかもしれません。

雪子さん最初のお見合いは「お断り」までに、かなり難航していくようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




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姉も味方になってくれて

旅行帰りの電車で、10年以上前のお見合い相手・三枝氏と偶然に乗り合わせた雪子さん。

三枝氏が下車して、ほっとした彼女は当時を回想しています。お相手の教養に不満があった雪子さんですが、姉の幸子も、三枝氏との結婚には反対してくれました。

雪子さんの思いはというと…

いくら資産家の夫人になれても、

豊橋のような小都会で
一生を燻って暮すのは
余りにも侘びしい、

と云うこともあった。

田舎暮らしはイヤだったのですね。
当時の最先端ともいうべき、阪神間の都市文化に育ち、享受する雪子さん。

結婚は、生身の人間だけの結びつきではないと感じさせます…

豊橋に嫁いでも

そして、これにうなずいてくれたのが、

この理由には中姉が
大いに同感してくれて、

そんな田舎へ嫁にやっては
雪子ちゃんが可哀そうだと、

自分よりは中姉の方が
より強硬に不服を
唱えたくらいであったが…

仲良し姉妹の結束力

三枝氏との縁談話があった当時、蒔岡家の四姉妹は父親を亡くしたばかりでした。ずっと一緒に暮らしてきた姉妹が、ここで離れ離れになることに、寂しさもあったのかと思います。

そしてもう一つ、この縁談を仲介した義兄に対する反感もあったようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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「お断り」した理由を思い出すと

旅行帰りの電車内で、過去のお見合い相手の三枝氏と偶然に乗り合わせた雪子さん。10年以上を経て、自分がいまだ婚活中なことに引け目を感じます。

幸い、男が藤枝駅で下車してほっとした彼女は、当時を回想しています。義兄が仲介した三枝氏を「お断り」した理由ですが…


自分が何処迄も「否」で
突っ張ってしまったのは、

あの男の容貌に
知的なものが欠けている
と云うこと、

―それが唯一の理由ではなかった。


見た目以外にも、まだあったようです (^^;

容貌ばかりでなく、
あの男は中学時代に病気したので

上の学校へ這入らなかったと
云っていたが、


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実際は中学校の成績が
芳しくなかったことが
分ったので、

いよいよ厭気が
さしたのであった。


お相手の知的水準に、どうにも納得がいかなかったようです。

三枝氏と遭遇する前、雪子さんが車内で手にしていた本は、アナトール・フランスの短篇集 ― この作家は「自己をも含む人間一般に対する軽蔑から発する皮肉や風刺に特色があり…」というもの。

都市文化に育まれ、ノーベル賞作家のシニカルな作品を読みこなす雪子さん。お相手の教養を問題にするのも(これはわがままというより)いたしかたないかなと感じます。

婚活では、自他の価値観をはっきりさせていくことが大切ですが、雪子さんにとって、ここはどうにも譲れない価値観だったようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




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