婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

2021年11月

カタリナに比べて自分たち姉妹は

蒔岡家と交流のあったロシア人、カタリナ・キリレンコが、玉の輿婚をしたことを知った幸子。行動力で幸せをつかんだ彼女に対し、引け目を感じています。

そこには、未だ嫁がせてやれない妹・雪子の存在がありました。

幸子はこう感じます。

自分たちの中では
一番向う見ずで
「変り種」とさえ
云われている妙子でも、

いざとなれば
多少は世間を
恐れる気があって、

未だに好きな人と
一緒になることも
出来ずにいるのに、


若い頃の妙子は、駆け落ちをしたことがあったのでした。その相手とは今も、結婚に踏み切れていません。一方、亡命ロシア人であるカタリナは、20代の若さながら…

母をも兄をも
家をも捨てて、

世界を股にかけて歩いて、
自分でさっさと
自分の運命を開拓する。


イギリスに渡り、保険会社の社長秘書になったカタリナ。そこで社長と結ばれたのでした。

晴空

羨ましいわけではないけれど

幸子は姉の矜持でこう思います。

あんなのよりは
雪子ちゃんの方が
どんなによいかと
思うけれども、

しかし感じるのは、保護者たる自分たちの至らなさ

でも兄や姉が
四人までも揃っていながら 、

今以て適当な聟を
見つけてやることが
出来ないとは

何と云う腑甲斐なさか。


30代半ばとなろうとする雪子を不憫に思う姉の幸子。

蒔岡家の婚活といえば、縁談が持ち込まれるのを待つばかりの姿勢です。この先、雪子に良い縁談は、はたしてもたらされるのでしょうか。

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※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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世間知らずは自分たちだった?

妙子の知人カタリナ・キリレンコが、イギリスに渡って玉の輿婚をしたというニュースが、蒔岡家の幸子にもたらされました。

幸子はその幸運に「あの程度の女性でも」と焦りを感じます。そこには、未だ嫁がせてやれない妹・雪子の存在がありました。

幸子はこう感じます。

お金持の男と
結婚して見せると云った
カタリナの言葉を、

世間を知らない若い女の
夢のような望み
とばかり思って、

好い加減に
聞いていたけれども、


幸子の住む世界の常識のもとに判断していました (^^;

カタリナのつもりでは
案外本気だったので、

自分だけの美貌があれば
そう出来ると云う
確信を持って

日本を立って
行ったのであろうか。…


夢を実現させるだけの自信があったのかと、幸子は考えを巡らせています。

晴空

カタリナの逞しさに落ち込む幸子

それに比べて、と幸子が思うのは、やはり自分たちの今現在のこと。

亡命の白系露西亜人の娘と、
大阪の旧家の箱入娘とを

比較するのは間違っている
かもしれないが、

でもまあ
カタリナのような
女もあるのに、

自分たち姉妹は何と云う
意気地なしであろうか。


妹たちの未婚にもなすすべもない、没落した旧家の行く末を、幸子は案じているようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




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カタリナですら結婚できるのに

末っ子・妙子の知人カタリナ・キリレンコが、イギリスに渡って玉の輿婚をしたというニュースが、蒔岡家の幸子にもたらされました。

ロシア革命で日本に亡命した女性ですから、決して恵まれた境遇ではありません。

幸子は次のように感じました。

若いお金持の社長が
新規に雇った女秘書と
恋仲になって

遂に彼女を
妻に迎えるなん
と云うことは、
映画のストーリーに
あるだけで、

実世間にはめったに
あるものではないと
思っていたけれども、

やっぱり
そうでもないのだろうか。


いまだカタリナの掴んだ幸運が、信じられない幸子です。

ハイヒール(まぽさん)
リアルシンデレラストーリーを目の当たりにして

何もそんなに
飛び抜けた美人でもないし、 

凄腕がある訳でもない
カタリナ程度の女でも

そんな幸運を摑むことが
出来るとすると、

西洋にはザラにあること
なのだろうか。

「カタリナ程度」の女性でもと、納得がいかない幸子です。


日本では考えられないこと?


また幸子が属する階級の、結婚に関する厳格さと比較しても、戸惑いを隠せません。

かりにも
保険会社の社長で、
大邸宅に住んでいる
三十五歳と云う
初婚の紳士が、


外的条件では、恵まれたお相手ですね。

つい半歳前に
雇い入れたばかりの、

身寄りもなければ
氏も素性も全然分らない
渡り者の一女性と
結婚するなんて、

たといその女が
どんな美人で
あったにしても、

日本人の常識では
とても考えられないことだが、…


幸子は、以前の名古屋の大富豪・沢崎氏と雪子のお見合いのことを思い出したのかもしれません。

そして妹の雪子は、カタリナ以上なのに…と感じている姉の幸子でした。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



「沢崎氏と雪子のお見合い」はこちら

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夢を叶えたカタリナに対して

蒔岡家の末っ子・妙子には、カタリナ・キリレンコという知人がいました。ロシア革命で日本に亡命してきた、20代のロシア人女性です。

カタリナは、玉の輿婚の野望を叶えるべく、日本を出てイギリスに渡ります。そして社長秘書となり、ついには社長と結婚したのでした。

妙子はカタリナの言葉を思い出しています。

欧羅巴(ヨーロッパ)へ行ったら
あたしきっと
お金持の男と結婚します、
見てて下さい

云うてたけど、
とうとう目的を達したんやわ


それに対して姉の幸子は、

いつやったか知らん、
日本を立って行ったのは?
まだ一年にもならへんやないの

希望通りのお相手とのスピード婚、現代でもなかなかないことです。

Decies, Lady.1911 ニューヨーク公共図書館蔵)

姉妹たちの女子トークはというと

幸子は感嘆します。

半年でそんな相手を
見付けるなんて、
えらいもんやわな。
やっぱり美人は得やなあ


それに対して妙子は…

美人云うても
カタリナぐらいなのん
何ぼでもいるやないの。

英吉利云う所は
美人のいない所かいな


このあたり、遠慮なしの女子トークですね (^^; カタリナの噂話をして気が済んだ妙子は、姉の家をひきあげます。

しかし幸子の方はというと … 夢を叶えたカタリナと、いまだ未婚の雪子を比較して、鬱々とし始めたようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




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蒔岡家と交流する亡命ロシア人一家

両親の法事を終えた蒔岡家。その姉妹たちに、思わぬニュースが届きました。

話題となったのは、カタリナ・キリレンコという女性。末っ子妙子の知り合いで、ロシア革命で日本に亡命してきたロシア人です。

妙子は姉に伝えます。

「そう云えばカタリナが結婚したよ」と云った。
「ふうん、こいさんに手紙が来たん?」

こいさんとは妙子のこと。

20代のカタリナは日本に家族(母と兄)を残し、イギリスに渡って保険会社に勤めました。そのカタリナから母親に、結婚の知らせが届いたようです。

昨日元町で
キリレンコに会うたら、


妙子さん妙子さん云うて

追いかけて来て、

カタリナ結婚しましたよ、

二三日前に
便りがありました、
云うねん

もちろん幸子が気になるのは、そのお相手のこと。

誰と結婚したん

自分が秘書をしていた
保険会社の社長やて


とうとう
掴まえたのんかいな


秘書として勤めた会社の、その社長との結婚
まさにシンデレラストーリーですね。

asper Francis Cropsey Warwick Castle England 1857 NGA

姉妹たちのさらなる驚きは

亡命ロシア人という、恵まれない境遇のカタリナと結婚した相手を、幸子はこう推測します。

大物掴まえたもんやわな。
―どうせよぼよぼのお爺さんやろうな

ところがそれが、
三十五で初婚の人やて


ほんまかいな

思わず出てしまった言葉 (^^; 

手紙には写真が同封してあり、お城のような邸宅が写っていました。そして夫となった社長は、カタリナの母と兄の世話も申し出てくれているとのこと。

法事の席では、中国に渡って成功した戸祭の妹のことを、聞いたばかりの蒔岡家姉妹。

幸子は驚きから徐々に、複雑な思いを抱き始めていくようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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元使用人はもはや主家に遠慮なし

蒔岡家の法事が済んだ宴席で、酔っぱらった元使用人の戸祭。酔いの勢いで、主家のお嬢さま方の未婚のことを話題にしてしまいました (-_-;)

これを末っ子の妙子が如才なく受け流し、客のひとり 塚田も助け舟をだします。

…国防服の上衣を脱いで
ワイシャツ一つに
なっている塚田が、


戸祭君々々々と、
向う側から呼びかけて、

君は近頃、
株で大層儲けはった
そうやおまへんか


と、真っ黒な顔に
金歯を光らせながら云った。


気をそらされた戸祭は、大陸に渡ったのことを話し始めます。

実は妹が
天津のダンスホールに
出ていましたら、
軍部に見込まれて
スパイになりましてん。


時代を感じさせる話ですね。戸祭の妹は、さらに大陸浪人に嫁いで羽振りがよくなり、日本に仕送りもしている様子。

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―その妹が、
今頃内地で
ボヤボヤしてることあれへん、

内地とは日本のこと。

ボロい仕事が
何ぼでもあるよって
天津へ来なはれ、
云うてくれてまんねん

妹に触発されて、船場の狭い世界からさらに脱していきたい元使用人の戸祭です。


野心が持てるようになった時代に


塚田も(本音はともかく)調子よく応じます。

僕も一緒に連れて
行っとくなはれ、

都合で大工
いつでも止めまっせ

戸祭の心意気はというと…

僕、儲かることやったら
何でもやったろうと
思うてまんねん。


戦争の影はまだ落ちないなか、社会のこれまでの秩序が崩れ始めた時代。

旧家の格式に囚われて、妹たちの嫁ぎ先すらままならない蒔岡家の人々は、 戸祭の発言をどのような気もちで聞いていたのでしょうか。

さらにまた後日、蒔岡家に別の知人の「玉の輿婚」のニュースが届きます。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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このままではもったいない人のチカラになります



法事の後の宴席での出来事

船場の旧家である蒔岡家。没落したとはいえ、四姉妹の両親の法事には人が集い、その後の宴席は賑わいをみせています。

宴もたけなわになると、かつての使用人が無神経なことを言い始めました。

…戸祭と云う男が酔っぱらって、

「雪子娘さんはまだ
お独りやそうですなあ、―」 と、

末座から胴間声を挙げて、
「いったい何でですねん」 と、
無遠慮に畳みかけたので、
ちょっと座が白けかかったが、


皆が言い出しにくかったことを、はっきり聞いてしまいました (-_-;)

末っ子の妙子(29才)がこれを如才なく受け流します。

うち等はな、どうせ
遅れついでですよってにな、―

と、妙子がことさら
落ち着き払った口調で云った。
―ゆっくりとええ人を探しまんねん

戸祭は引き下がりません。

そうかて、ゆっくり過ぎますやないか

カメラ兄さん
おめでたい酒はいつのことに?

宴席での婚活ネタは軽く受け流して

元使用人の婚活ネタ振り、今でも親戚会等でありそうな出来事です。

姉妹の中でいちばん世慣れた妙子は、目くじら立てずにスルーしました。

阿保らしい。
『今からでも遅うない』
云うことがありまんがな

彼方此方で女たちが
控え目な笑い声を洩らした。


妙子のユーモアに、場が救われた感じです。
もう一人の当事者・三女はというと…

雪子も黙って
ニコニコしながら
聞いていたが、

辰雄は
聞えない振りを
していた。


格式ある蒔岡家の四姉妹のうち、二人が未婚 本家としては、最も触れられたくなかったところ。婿養子で本家を継いだ辰雄としては、親戚の手前、なおさら引け目を感じるところです。

発言が暴走気味の元使用人・戸祭ですが「調子に乗る」だけの理由があったようで … これは次回に書いてみたいと思います。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




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母の二十三回忌と父の十七回忌の法事を終えて

没落したとはいえ、船場の旧家である蒔岡家。
四姉妹の両親の法事には、たくさんの人が集まっているようです。

法事のあとの宴会は、
播半の時の花やかさを
覚えている者には
侘しいことで
あったけれども、

善慶寺の庫裡の
広間を打ち抜いて

四十人ほどの人々が
膳に就いたところは、
そんなに寒々とした
ものでもなかった。


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宴席での話題はというと

宴会の席で、次女の幸子は、母の追憶にひたっていますが…

母が亡くなった時の、
あの箕面の家の
庭の風情を
想い出していたが、

男たちの多くは
欧州戦争のことを
話題に上せた。


小説で設定されたこの法事の時期は1939(昭和14)年9月のこと。

第二次世界大戦が始まっていました。この時はまだ、遠いヨーロッパでの出来事、日本人にとっては「対岸の火事」の感覚です。

そして女性たちの話題は婚活ネタで、未婚の蒔岡家三女のこと。

女たちは例に依って、
「雪子娘(とう)さん」と
こいさんの若さを褒めたが、 

それも辰雄に
当て付けがましく

聞えないように、
程々にした。


本家の体面をおもんばかっての礼儀正しい会話。

しかし宴席の常で、この後、酔っ払いが未婚の姉妹たちに絡み始めたようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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