婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

2021年12月

説得に努める丹生夫人

幸子の知人・丹生夫人がもたらした、医学博士・橋寺氏と蒔岡家の三女・雪子の新たな縁談。「今日の夜にお見合いを」と電話で勧める丹生夫人と、姉の幸子はやり取り中です。

アクションの遅い幸子に対して、夫人はこう言います。

そんなにむずかしく
お考えにならないで、

気軽にいらしって
戴けないか知ら、

…ねえ、兎も角も
会うだけ会って
ご覧になるように
雪子さんに仰っしゃってよ、


婚活中のコツは確かにこれ。
考えているぐらいなら、実際に会う方がずっといい。

会いもしないで
お断りになったら、 
それこそあたし怒ってよ。


このあたりは、やはり友人同士の気安さですね (^^;

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電話口でのやりとりは続きます

蒔岡家の行動パターンを知っているので

丹生夫人はそうして先手を打ちます。
もうお見合いの席を予約していますから、時間には橋寺さんと待っていますと言って、

御返事のお電話を
戴くには及ばない、

大概お越しになるもの
と思ってお待ちしている、


と電話でのやりとりを切り上げました。
受け身の幸子と雪子ですから、段どられれば動いてしまいます (^^;

はたして幸子は、お見合いに雪子を行かせる手配を始めるようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



以前の野村氏とのお見合いでは、仲介者に調整を重ねさせました

サンマリHPから

以前の仲介者・陣場夫人の話題になって

医学博士・橋寺氏と蒔岡家の三女・雪子の新たな縁談。今度の縁談は、幸子の知人・丹生夫人からもたらされたものでした。

姉の幸子が、電話でその詳細を確認するうち、話題は以前の仲介者・陣場夫人のことになりました。

陣場夫人から紹介されたお相手を「お断り」した過去に、後ろめたい気もちがある幸子。「彼女が何か言っていた?」と丹生夫人に聞いています。

丹生夫人の返答は、

ええあの、… と、
ちょっと躊躇しながら、

お世話したんだけれど
はっきり
断られちまったって

云っていらしったわ。

陣場夫人からの縁談の顛末はというと…


丹生夫人なら任せて大丈夫?

気になる幸子がさらに「陣場夫人は怒っていた?」と尋ねると…

さあ、
そうかも
知れないけど、

そう云ったって
縁がないものは
仕方がないわ。


そんなことで
一々怒ってたら

縁談の世話なんて
出来やしないじゃ
ありませんか、

東京弁を操る丹生夫人は、さばけた人柄のように思えますが…

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あたしは決して
野暮は云いませんから、

お会いになって
お嫌だったら

ご遠慮なくお断りに
なったらいいわ、


あれこれ考えているよりは、アクションを起こした方がご縁が発展するのは確かです。

ただ以前も身内の仲介者の前のめり斡旋で、後味の悪い思いをした蒔岡家。どうしたものかと、幸子の逡巡は続くようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




身内の菅野夫人が進めた強引なお見合いの話はこちら 
サンマリHPから

勢いで縁談を進める丹生夫人

幸子の知人・丹生夫人から入ってきた蒔岡家の三女・雪子の新たな縁談。

お相手・橋寺福三郎氏の条件は、思いのほか悪くありません。しかし実は丹生夫人、氏の亡くなった奥さまと生前の知り合いという程度。それでお見合いを斡旋している様子です。

それでは
御一任しますから 
何分宜しくって
云うことなんですの、


橋寺氏も本気で言っているのか、判然としません (^^; 

ですから
蒔岡さんの方も是非
「うん」と仰っしゃって
下さらなけりゃ、


と丹生夫人、幸子の苦手な東京弁で、まくし立てています。

丹生夫人の段取りに抵抗する幸子

夫人の勢いに押されながら、幸子はこう不満を伝えます。

丹生さんひどいわ、
― と、幸子もいくらか
東京弁に釣り込まれながら、

―だってあなた、
あたしが附いて来たら
いけないって
仰っしゃったんだそうですね、


今日の夜にお見合いという性急さに加え、同席できないことが、幸子は不満です。

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雪子の付き添いは、夫の貞之助でという希望です

丹生夫人の返答はというと…

それは井谷さんが云ったのよ、

井谷とは、いつも雪子のことを気にかけてくれている美容院経営者。

あたしもそれに
賛成したには
違いないけど、

云いだしたのは
井谷さんなんですから、

怒るなら
井谷さんに怒ってよ、


橋寺氏との縁談を仲介している丹生夫人と井谷さん、この二人には、のんびりした幸子が関わると縁談が進まないという共通認識があるのでしょう。


以前の縁談のことが話題になって


そうした幸子の不満をよそに、夫人は話題を切り替えます。

そうそう、
そう云えばこの間
陣場さんの奥さんに会ったら、

あなた方の噂を
していらっしゃったわ、

陣場さんも
お世話なすったことが
あるんですってね、


過去の雪子のお見合い相手・野村巳之吉氏(46才)は、陣場夫妻の仲介でした。

この時の蒔岡家はまだ上から目線(^^; 初めから「お断り」姿勢、なのに返事は遅いという失礼な態度に終始していました。

狭い芦屋社交界で、あまり縁談で不義理をすると、マズいと思うのですが…案の定、丹生夫人の耳にも噂は入るところとなっていたようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



陣場さんが過去にお世話をしたのは、野村氏でした。蒔岡家の恨まれやすさも書かれています

陣場夫人は熱心に雪子に野村氏との結婚を勧めました


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親しくないのにお見合い斡旋

丹生夫人を介して入ってきた蒔岡家の三女・雪子の新たな縁談。

お相手・橋寺福三郎氏の条件は、思いのほか悪くありません。しかし実は丹生夫人、さほど知り合いではないのに、お見合い斡旋に乗り出している様子です。

丹生夫人は、橋寺氏本人ではなく、その奥さまと知り合いでした。

亡くなった夫人が
丹生夫人の趣味の友達、
― 臈纈染めの講習会で
親密になった
と云うだけの関係で


だから旦那さんには
奥さんの生前に一度と、
お葬式と一周忌の時に

お目に懸っただけじゃ
なかったか知ら、


ご主人である橋寺氏とは、その程度のおつきあい (-_-;)

…今度のことで
昨日お会いしたのが
四度目ぐらいよ、
と云うのであった。

昭和の室内

勢いだけのお見合い仲介の危うさで

その程度の面識で、丹生夫人はずいぶん思ったことをハッキリ口にするタイプのようです…

でもあたし、
死んだ奥さんの
ことなんか

いつ迄くよくよ考えて
いらしったって

仕様がないじゃ
ありませんか、


もし私がこう言われたら、かなり引いてしまいますが… (-_-;)

あたしが
とてもいいお嬢さんを
御紹介しますから、

出ていらっしゃいって

云ってやったら 

それでは
御一任しますから
何分宜しく

って
云うことなんですの、

この時の橋寺氏、亡くなった妻の知人ということで、礼を失しない程度に対応したかもしれません。勢いばかりの丹生夫人のお見合い斡旋ですが、はたして蒔岡家は受けるのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




以前のお見合い相手も、儀礼的に対応したかもでした


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見た目も問題ないようです

丹生夫人を介して入ってきた蒔岡家の三女・雪子の新たな縁談。ここまでの夫人の話を聞く限り、お相手・橋寺福三郎氏は、これまでになくいい感じのお相手のようです。

風采も立派で、
押出しが堂々としており、

先ず美男子と云えば
云える容貌であること、

等々のことが知れ、
案外条件が好いのであったが、

洋間の窓
雪子さん好みのモダンなお医者さまでしょうか

さらなる幸子の問いかけに…

しかし電話口での話が進むと、丹生夫人の説明は要領を得なくなってきます(-_-;)

年齢を聞くと、
多分四十五か六ぐらいの筈と云い、

娘の歳はと云うと、
たしか女学校の二年生ぐらいと云い、

外に女の兄弟は?弟や妹は?
などと問うても要領を得ず、


現代のマリッジサロン(結婚相談所)なら、条件的にすぐわかることですが…

両親のあるなしでさえが、
さあ、どうだったか知ら、
と云うような答なので、


以前に、義理の姉が持ち込んできた縁談で、痛い目にあった蒔岡家。

今回も仲介者の様子が、どうも心もとない感じです。果たして親代わりの幸子と貞之助は、この話を受けるのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



義理の姉の勢いだけのお見合い斡旋の話はこちら

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お相手のプロフィールがわかりました

丹生夫人から、井谷を通じて蒔岡家にもたらされた新しい縁談。雪子の今度のお相手は医学博士です。「本日の夜にお見合いを」という井谷の電話に戸惑う姉の幸子。

より詳しい情報を得ようと、丹生夫人に直接確認をとりました。

そしてわかったことは…

その人は
橋寺福三郎と云い、

静岡県の出身で、
兄が二人あり、

その兄たちも皆
医学博士であること、


お医者の家系のようですね。

タイプライター

ドイツに留学した
ことがあること、

住宅は大阪の天王寺
烏ケ辻に借家していて、

現在は娘と二人で
「ばあや」を使って
暮していること、


なかなかセレブな家庭のようです。

娘は夕陽丘女学校に
通っているが、

亡くなった夫人に似て
器量の美しい、
素晴らしい児であること、

唐突にもたらされた縁談、しかしこの橋寺氏、なかなかいい感じのお相手のような…

お相手の資産状況はというと

そんな次第で
兄弟たちが皆
相当な者になっており、

郷里での名家であるから、
財産もいくらか
分けて貰っている
ことと思うが、

岩田医院
昔の医院は門構えも立派です

当人も東亜製薬の
重役をしているので、

可なりの収入が
あるに違いなく、
生活は派手に見えること、

家柄も財産も、申し分ないような感じですね。雪子さん好みの「贅沢さ」もあるようです。この先、この降ってわいたような縁談に、蒔岡家は心動かされていくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



以前のお見合い相手は財産がありませんでした

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急なお見合いセッティングなので

丹生夫人から、井谷を通じて、蒔岡家にもたらされた新しい縁談

雪子の新しいお相手は医学博士 亡くなった前妻との間に女の子がひとりいて、製薬会社の重役という人物です。

井谷から「本日の夜にお見合いを」という電話を受けて、姉の幸子は戸惑います。

直ぐにも返事を
聞きたそうに
云うのであったが、

まあ一二時間
待ってくださいと、

幸子は一と先ず
切って貰った。


これまで「とりあえず待ってください」という返事の遅さで、たくさんの縁談をフイにしてきた蒔岡家。無自覚なことが結果、対応の無神経さとなり、人の恨みもかっています。

それでも懲りずに、新しい縁談を持ってきてくれる井谷は、ありがたい存在です。

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電話が飛び交う雪子のお見合いセッティング現場

幸子のいつもの逡巡が始まって

井谷の電話を切り上げた幸子はこう感じます。

…雪子ちゃんはどう思う、
今日聞いて今日なんて、

私もああ云う
急勝は 寔
(まこと)
性に合わないのだけれども、

しかしあれから此方、
始終雪子ちゃんのことを
気に懸けていてくれる
井谷さんの親切は
感謝しなければならない


本当にその通りです (^^;

しかし話を姉・幸子から聞いた当人の雪子はこう希望しました。

電話でもよいから、
直接丹生さんの奥さんに
もっと委しく聞いてみて、


と雪子が云うので、


幸子は今度は電話で、丹生夫人と直接話を始めます。そしてわかったお相手の医学博士のプロフィールはというと … それはまた次回に書いてみたいと思います。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。


以前の井谷の活躍ぶりはこちらから

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お見合いのセッティングに入る井谷

世話好きな美容院経営者・井谷から、雪子に新たな縁談が舞い込んできました。

井谷はある日、幸子を知る丹生夫人と知り合います。

その夫人から、今は独身の「医学博士」の情報を得ます。前妻の間に女の子がひとりいて、ある製薬会社の重役をしている人物です。

井谷からこの縁談を聞かされて、雪子の姉・幸子はこう感じます。

丹生夫人と云い、
井谷と云い、

孰方も性急で
且実行力に
富んでいる方なので、

多分この話は
立ち消えになることは
あるまいと思っていると、


予想通り、井谷から段取りの電話が入ったようです。

この間の件のことで
丹生さんから電話があり、 

今日の午後六時に
嶋の内の「吉兆」と云う
日本料理屋まで、

私にお嬢さんを
お連れしてくる
ようにと云うことですが、
如何でしょうか。

お見合いは、その日のうちにというスピード感です。

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雪子の付き添いについての希望

そして井谷は(丹生夫人の意見として)同行は幸子の夫・貞之助でと希望します。

誰方か
お附き添いになるのなら
旦那様にして、
奥様は止めて戴きたい。

孔雀が羽を
ひろげたような方が
いらっしゃると、

お嬢さんの印象が
稀薄になるから
と云うことで、


派手な美貌の幸子は同席不可ということに … その本音は、意思表示がとにかく遅い幸子を、縁談の進行から遠ざける気もちがあるのかもしれません。

そしてやはり、意思表示の遅い幸子は、今晩のお見合いについて電話口で即答できずにいるようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



別のお見合いでもやらかしていた蒔岡家


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