婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

2022年01月

貞之助がお相手側に挨拶して

雪子の付き添い役として、急に引っ張り出された貞之助。会場へ向かうタクシー内で、今日のお見合いの事情を井谷に訊ねます。

そして縁談を持ち込んだ丹生夫人と井谷が、さほどの知り合いでないとわかります (^^;

吉兆の座敷に通された三人は、先着していた丹生夫人と橋寺氏に対面しました。貞之助が丹生夫人に挨拶すると、夫人は以前に幸子を訪ねた思い出話を始めます。

あの時は
お友達と三人で
押しかけてって、

臥てらっしゃるのを
無理におこしちゃったりして、

女ギャングだと
お思いになったかも知れないわ。


「女ギャング」は、この頃の流行り言葉だったのでしょうか、この後にもたびたび出てきます。

700827_s

ようやくお相手が口を開いて

ここで、雪子さんの新たなお相手、橋寺福三郎氏が話を始めます。

「全く女ギャングですよ」と、
さっきから紹介されるのを
待ち構えながら、

茶の背広服の両膝をついて
腰を浮かしていた橋寺が、

チラと夫人に横眼を使って、
微笑を浮かべながら云った。

橋寺氏もまた強引に、丹生夫人に誘われたのでした。

何でもかんでも
附いて来なければ
いけないって云う訳で、

今日はわたくし、
何が何やら無我夢中で
引っ張り出されて
来ましたんで、……


初対面の貞之助への軽いあいさつ代わりだったのでしょう。

しかしこの橋寺氏の言葉に、丹生夫人と井谷が威勢よく反論を始めます。どんどん二人の女性のペースで進行するお見合いですが、この先どうなっていくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです



サンマリHPはこちらから

お見合い会場に向かうタクシーの中で

本日・夜のお見合いのため、貞之助の事務所で落ち合った雪子と仲介者の井谷。気を利かせた井谷が雪子を連れてきて、三人でタクシーに乗り込みました。

タクシー

今日のお見合い同行を妻の雪子から、急に頼まれた貞之助。

お見合い相手のことも、その知り合いという、斡旋者の丹生夫人のことも、実はよくわかっていません (^^; 貞之助は井谷に訊ね始めました。

で、 今日の相手が
どう云う人で、
井谷とどう云う
関係にあるのか、

途々車の中で
聞いて見ると、

わたくしもよくは
存じませんから

委しいことは
丹生さんに
お聞きになって
下さいまし、


なんと、井谷と丹生夫人は 一度しか会ったことがないという間柄 (-_-;) 貞之助は「いよいよ狐につままれたような工合」となっていきます。

お見合い会場に到着して

そうこうするうち、タクシーは目的地に着きました。

「吉兆」と云う家へ
行って見ると、

もうその夫人と
橋寺と云う人とが
先着しているのであったが、

ゲタゲタ03

井谷は座敷へ通りながら、

「今日は。― 大分お待ちになって?」
と、今日が二度目の対面にしては
ひどく懇意そうな口調で云った。


高級美容院経営者で、人あしらいに馴れている井谷ならではの社交性

「いいえ、あたしたちもたった今」
と、丹生夫人も
心やすそうに
それに応じて、

―でも感心ね、
きっちり六時に
おいでになったわ


それに対して井谷はと云うと

わたくしは時間に
正確なんですのよ、

それでも今日は
お嬢さんの方が
どうかと思ったもんですから、

来がけにお誘いして
来たんですの


丹生夫人と井谷は、二人とも、蒔岡家の遅刻癖は了承済みのようです。

さて、すでにお見合いの席に着いている橋寺氏とはどのような人物なのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。 



橋寺氏とのお見合い第一話はこちらから


高級美容院経営者・井谷の人となりはこちらから



サンマリHPから






義妹の遅刻に気が気でない貞之助

丹生夫人が斡旋のお見合いの席に、一人で行くことを渋る雪子。そこで、姉の幸子の夫・貞之助が付き添いとなり、貞之助の事務所で、雪子と仲介者のひとり・井谷と落ち合うことに。

早めの到着を念押ししたのに、雪子は現れません

妻や雪子が
時間を守らないのは
毎度のことであるから、 

自分は馴れっこになって
いるけれども、

急勝な井谷を待たす
ことになっては、

此方も苛々させられるのが
叶わないので、


井谷は蒔岡家姉妹が通う高級美容院の経営者。やり手なだけに時間にも正確です。

4627795_s

遅刻を見越して行動する井谷

そうこうするうちに、井谷が事務所に到着します。雪子を伴っていました。
安心した貞之助は…

やあ、一緒になって
ちょうどよかった。
今電話を申込んだ
とこやったが、


妻に催促の電話をしようとしていたのですね。
それに対して井谷はというと、

実はわたくし、
お嬢さんを
お誘いに上って
お連れして
来たんですの


蒔岡家姉妹の遅刻グセをきちんと見越しての行動です。

もう時間が
ございませんから、
直ぐに如何で
ございましょうか。

自動車を待たせて
ございますが、


スムーズな進行のための、井谷の行き届いた心づかい
お相手を怒らす振る舞いの多い姉妹たちを見捨てない、心強い婚活サポーターです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



基本結婚に熱意の無い雪子でした

もう一つのサンマリブログはこちらから

急なお見合い同伴を妻から頼まれて

本日夜にお見合いを」という丹生夫人からの急な知らせに戸惑う幸子。内気な雪子は、ひとりで行くことを渋ります。幸子は夫・貞之助の職場に電話をして付き添いを依頼しました。

こうして貞之助の職場で、雪子と井谷(丹生夫人に協力する高級美容院経営者)が落ち合うことに。貞之助はというと…

それで差し支え
ないけれども、

井谷は時間通り
キッチリ来るに
違いないから、

雪子ちゃんも
それに遅れないように、


井谷は当時のキャリアウーマンで、時間には正確。それに対し蒔岡家姉妹は、時間にかなりルーズなようです(-_-;) しかしお見合いに遅刻は、現在でも厳禁です。

古い時計
婚活で時間厳守は必須マナー

雪子が時間を守るか心配な貞之助


雪子さんの遅刻を見越して、貞之助は電話で妻にこう注意します。

井谷より二三十分早く
着くくらいに来て欲しい、

と、固く云って置いた
のであったが、

五時十五分過ぎ
になってもまだ
見えそうな様子
がないので、

気が気でなかった。


待合せ時間は、五時三十分でした。

少々強引とはいえ、親切に縁談を持ってきてくれる丹生夫人や井谷。蒔岡家はきちんと応えることができるでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



サンマリHPから

もう一つのサンマリブログから

雪子の気もちを確認する幸子

本日夜にお見合いを」と丹生夫人が電話で伝える、蒔岡家三女・雪子の新たな縁談

その会話の中で、丹生夫人は、過去の縁談について丹生夫人が怒っていることを幸子に伝えます。気にしていただけに、幸子は夫人の斡旋を断れないようです。

幸子は、お見合い当人の妹・雪子の気もちを確認します。

「どうずる?雪子ちゃん、―」
「……」
「まあ行ってみたら、……」
「中姉ちゃんは?」

30才過ぎて雪子さん、まだ一人で行動できません(^^;

あたしは
附いて行ったげたいけど、
あない云やはるよって
遠慮しとくわ。

親代わりの幸子は(判断の遅さからか)同伴を丹生夫人からやんわりと断られていました。

322256_s

夫の職場に連絡を入れる幸子

雪子は渋ります。

「二人ではなあ、……」
「そんなら、貞之助兄さんに
附いて行って貰おう。―」


と、幸子は雪子の顔色を
判じながら云った。

「―用事さえなかったら、
行ってくれはるよって、
電話かけて見ようか」


お気に入りの妹とはいえ、少々甘やかし気味の幸子。夫の職場に「急報で申し込んだ」と、電話を入れたようです。

急な知らせに貞之助はどう対応するのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



サンマリHPから






 

丹生夫人の話を裏読みすれば?

本日夜にお見合いを」と電話で丹生夫人が伝える、蒔岡家の三女・雪子の新たな縁談。お相手は医学博士の橋寺氏です。

親代わりの姉・幸子としては、返事を先延ばししたいのが本音。しかし丹生夫人が洩らした、過去の縁談の仲介者・陣場夫人が怒っているという噂話が気になっています。

それにしても
丹生夫人は、

何で突然
あんなことを
云い出したのだろうか。


過去の仲介者に失礼な態度をとった自覚が、幸子を卑屈にさせています。

1361931_s

平素から口数の多い
夫人ではあるが、

不意に関係のない人の
噂を持ち出して、

聞かせないでも
よいことまで
聞かせたのは、

いつもの単純な
おしゃべりだけではなく、

ひょっとすると
威嚇的の意味を含めて
いたのかも知れない。


このあたり、丹生夫人が意図的か否かは、なんともわからないところ。ただ、蒔岡家のそんなネガティブな噂話を聞いてもなお、縁談を仲介してくれる、ありがたい存在であることは確かです。

ここはやはり、好意に応えた方が良いと思うのですが … 幸子は雪子の気もちを確認するようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。

陣場夫人を怒らせたお見合いの顛末です

サンマリHPから

やはり怒っていました

丹生夫人
がもたらした、医学博士・橋寺氏と蒔岡家の三女・雪子の新たな縁談

本日夜にお見合いを」と電話で言う夫人に対し、姉の幸子は、いまだもったいぶって返事を先延ばししようとしています。

しかし丹生夫人がふともらした、過去の縁談の仲介者・陣場夫人の話が気になり始めていました。

陣場夫人が怒っている
と云うことが、

何か知ら
ぐんと胸に来たので、 

そのために
今日はひとしお
気が弱くなっていた。


当時の蒔岡家は、お見合い相手の野村氏に、かなり上から目線でした。

あの、一昨年の春
野村と云う人の
縁談を断った時、

本家が承知して
くれないから
と云うことにして

随分婉曲に
その意味を通じた
つもりであったが、

やっぱりあれが
相当強くこたえた
のであろうか。

陣場夫人に迷惑をかけた顛末です



陣場夫人にお見合いの段取りを丸投げして、しかも最初から「お断り」と決めていた蒔岡家です (-_-;)

幸子も内々、
怒っているのでは
ないだろうかと、
気が咎めていたからこそ、

そう聞かされて
一層はっとしたのではあるが、

狭そうな芦屋社交界で、陣場夫人から丹生夫人へと噂が広がる怖さを、のんきな幸子は、今ひとつ理解していなかった感じです。

それでもと今回、丹生夫人がもってきてくれた縁談を、はたして蒔岡家は受けるのでしょうか。

縁側
旧家にも雪子にも翳りが日々感じられて…

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



細雪ブログの第一話はこちら

もう一つのサンマリブログはこちらから

いまだ逡巡している幸子の本音

いまだ未婚の蒔岡家の雪子にもたらされた新たな縁談。丹生夫人が紹介する医学博士の橋寺氏は、条件を聞く限り、良い感じのお相手です。

それでも、お見合いに迷う親代わりの姉・幸子の本音はというと…

問題は何処までも、
そんなに安っぽく
臀を持ち上げたくない
と云うこと、

結局は申込みに
応じたいのだが、

いまだ見栄をはりがちな旧家の姿勢でしょうか (-_-;)

今日のところは
辞柄を構えて

二三日でも先へ

延ばしたい
と云うこと、

要するに何となく
勿体を付けて
見たいだけ
のこと
なのであるが、


30代婚活で、あまりに危ういメンタリティです(-_-;)

さくら旅人

上から目線ばかりでもいられなく

しかしさすがの幸子にも焦りがありました。

一方では又、
あんなに意気込んで
いてくれるのに、

それを素直に
受け入れないでは、

先方の感情が
どうであろうかと云う
配慮もあった。


過去に縁談の仲介役・陣場夫人を怒らせた経緯がある蒔岡家。仲介者に注文はつけますが、それでは自分たちでお相手を探そうという気骨はありません。

縁談を待つ姿勢の者として、消極的な心配はつきないようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



自分で行動して良い条件のお相手と結婚した蒔岡家の知人のお話はこちら

現代日本でも「待ち」の姿勢では結婚しづらい時代です

↑このページのトップヘ