顔合わせも終わって、雑談から

蒔岡家・三女雪子と、名古屋の大富豪・沢崎家当主との縁談。

お見合い場所は、大垣の豪農・菅野家の敷地内にある座敷「爛柯亭(らんかてい)」。親戚筋の菅野夫人が仲介したため、夫人がその場を取り持っています。

そして、一同の緊張をほぐすための雑談は、お見合い場所の由来についてでした。

恵富


一同が今いる「爛柯亭」を褒めた幸子に対して、夫人はというと…

何卒お気に召しましたら、
幾日でも泊っていらしって、…

主人も晩年には
閑静なのが気に入りまして、
もうずうっと爛柯亭にばかり
引き籠っていたのでございます。


幸子はここでこう尋ねます。

そう云えば、
爛柯亭の「爛柯」と申しますのは、
どう云う意味でございましょうか。


どうも余計な質問だった?


菅野夫人はこの答えを、沢崎氏にふります。

さあ、それは私よりも
沢崎さんにご説明を願った方が…

と、未亡人はちょっと
試験するような口調で云ったが、


これに対し、お見合い相手の反応はというと、

沢崎はさっと顔の色を変え、
「さあ、―」と、
急に取り澄まして
何とも云えぬ
不愉快そうな眼つきをした。


知らないことを聞かれたとはいえ、かなり神経質に気もちを顔に出すらしい沢崎氏。お見合い相手としては、気づまりになりがちなタイプです。

この後は、お昼の会食になる流れですが、この場の緊張は続いていくのでしょうか。

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※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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