菅野夫人から義兄にも不満が飛び火

名古屋の大富豪・沢崎家当主から「お断り」の手紙を受け取った、親代わりの幸子と夫・貞之助。

予想通りとはいえ、不満の矛先は、仲介役の菅野夫人からその弟(蒔岡家の姉妹たちには義兄)にも向けられていくようです。

貞之助達にしてみれば、
未亡人は兎も角も、

本家の義兄が
云うことであるからと、
義兄を信じて
乗り出したのであったが、

単に取次をしただけと云うのは
遣りっ放し過ぎるではないか。


義兄の顔を立てて、大垣までお見合いに出向いたのに … という不満です。

結局今度のことは、
貞之助も幸子も雪子も、

徒にいやな思いを
させられたと云う以外に
何の得るところもなく、…


これまでは、いつもこちらから「お断り」をしてきた蒔岡家。大いに船場の旧家のプライドが傷ついて、雪子さんは相変わらず、縁遠いまま


東京の本家にはそれとなく結果を知らせて


東京の本家にいる雪子さんには、ずいぶん経ってからお見合いの結果を知らせた様です。

幸子は夫の旨を受けて、
それからわざと
半月ばかり過ぎた時分に、

姉に宛てて
何となく書面をしたため、
そう云えば菅野の姉さんから
お便りを戴いたが、

どうもあの話は
巧く行かなかったらしいと、
ちょっと用箋の端に書いた。


今回のお見合い仲介のことでは、本家に不満をためた幸子たちです。でもそれをストレートに伝えないのが、まさに彼らのいうところの都会人の嗜み

長姉から雪子には、あんばい話して欲しいと気遣いをみせる次女の幸子でした。

319961_s

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。


 
サンマリHPはこちらから

このままでは「もったいない人」のチカラになります