姉だからこそわかっていても

家族も大いに期待する蒔岡家三女・雪子と医学博士・橋寺氏との縁談。ついに橋寺氏から直接雪子にデートのお誘い電話が入ります。

しかし極端に内気な雪子は対応ができないまま。

姉の幸子が外出先から戻ってみると、案じた通り、橋寺氏の誘いを「断って」いたのでした。

幸子は妹の心中をこう察します。

結婚の話の進行中に、
その相手の男、―
而も二三度しか
会ったことのない男と、

二人きりで
町を散歩するなんと
云うことを、

婚活としては、ごく普通の流れなのですが (^^;…

日頃の雪子が
承知する筈のないことは、

彼女と云うものを
底の底まで
知り抜いている
姉の身には

最初から
分っていることで、

しかしこの程度のことが不可では、婚活の行く末が不安です (-_-;)

雪子の性分として
無理もないことに
思えるのであるが、

それでいて
幸子は腹が立って
ならなかった。


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周囲の尽力の大きさを考えると

姉の幸子はさらにこう感じます。

ロクに知らない
男なんぞと

外を歩いたり
料理屋へ行ったり
することは

如何にも厭であろう


橋寺氏は、ドイツ留学帰りの医学博士、しかも大手製薬会社の実質社長です。

そんなお相手でも、雪子さんにとっては「ロクに知らない男」となってしまうのですね。

けれども、それでは
幸子には兎も角も

貞之助に
済むまいではないか。


義兄の貞之助は、自ら橋寺氏の会社や自宅に出向いて、結婚への流れをつけてきました。

その尽力も、ここですべて無駄になってしまうのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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