ウソがバレていると知らない妙子は

蒔岡家の四女・妙子は、かつての恋人・奥畑家の啓坊を利用しながら「経済的に自立している」と、姉たちに堂々とウソをついています。

啓坊の「婆やさん」から実情を聞いている姉の雪子は、妹にさりげなくこう尋ねました。

こいさん、
経済的にもいろいろ啓坊に
厄介かけてることが
あるのんと違う?

―こう云うたら何やけど、
お金のことでも
世話になってるのんと違う?


核心を突く質問に対して、妙子はというと…

阿保らしい、
そんなこと
絶対にないわ

ほんまかいな


姉のツッコミたいして、妹はまたお決まりのセリフを繰り返し始めました。

うち、
そんなことせんかて
自分の稼ぎで
やって行けたし、
貯金もしてたと云うこと、

雪姉ちゃんも
知ってるやないの 


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妙子は得意の洋裁でも収入を得ていると言っていました

姉の反論が始まって

姉の雪子はそれなら、その証拠が見たいと言い始めます。

こいさんは
そない云うけど、

世間では
そう思うてえへん人も
あるねんわ。

あたしかて、
ついぞ一遍も
こいさんの貯金帳や小遣帳
見せてもろたこともないし、

どれぐらい
収入あるのんか、
ほんまのことは
知らなんだし、………

姉の問いに直接は答えず、妹の妙子はこう切り返します。

第一啓ちゃんに
そんな働きがある
思うてるのんが、
間違いやわ。

うちはあべこべに、
今に啓ちゃん養うて
行かんならん
思うてたぐらいやねん


さんざん養われていた挙句の妙子の発言。
雪子はどのように論破していくつもりなのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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