今日は『若草物語』の作者ルイザ・メイ・オルコットのことを、少し書いてみたいと思います。
19世紀当時の成功したキャリア女性
四人姉妹の次女ジョーは、最初の『若草物語』では、主役級の存在感があります。
しかし続編では、末っ子エイミーの存在感がぐっと増してきます。対して損な役回りとなってくるのが男勝りのジョー。作者のオルコット自身がモデルと言われています。
オルコットは13歳の日記にこう記しています。
わたしは年齢のわりに
おとなびているし、
少女っぽいものが
あまり好きじゃない。
人にはおてんばで
変わった子どもだと
思われてるけれど、
母はわたしのことを
ちゃんとわかっていて、
助けてくれる。
オルコットが生きた当時のアメリカは、女性の権利主張が政治的に盛んになった時代でした。婦人参政権獲得運動の全国組織が結成されます。
そして『続若草物語』が刊行された1869年は、初めて婦人参政権を与えるよう、憲法を改正する提案が出された年でもありました。
『若草物語』で、富と名声を得たオルコットは、自立した女性の理想像とみなされて、後半生は、さまざまな女性の集会や活動に呼ばれています。
オルコットの肖像写真(ニューヨーク公共図書館蔵)
作者オルコットの分身、ジョーとエイミー
続編に描かれるジョーは、肩肘張って世間の慣習に逆らっているため、何かと敬遠されがち。ジョー自身も自覚はあって、苦しんでいます。
お金持ちの伯母さんを前にしてのかわいげのない言動で、ヨーロッパ旅行の機会も、エイミーにさらわれてしまいます。
ジョーは、世渡り上手な妹・エイミーには批判的、でもそのスマートな生き方にどこか羨ましさも感じているようです。
続編に描かれるジョーは、肩肘張って世間の慣習に逆らっているため、何かと敬遠されがち。ジョー自身も自覚はあって、苦しんでいます。
お金持ちの伯母さんを前にしてのかわいげのない言動で、ヨーロッパ旅行の機会も、エイミーにさらわれてしまいます。
ジョーは、世渡り上手な妹・エイミーには批判的、でもそのスマートな生き方にどこか羨ましさも感じているようです。
エイミーの旅行記の元ネタは?
こうしてエイミーはヨーロッパに旅立ち、家族のもとに旅行日記を送ってきます。その内容は『若草物語』が書かれる少し前、オルコット自身の1865~66年のヨーロッパ体験がベースとなっています。
このとき、エイミーのモデルとなった末妹メイは、実は同行していません。つまり『続若草物語』が書かれた時点で、ヨーロッパを知っていたのは、オルコットだけなのです。
こうなると、ジョーと正反対の性格であるエイミーもまた、作者の分身であるといえると思います。
女性はどのように生きるべきか?(メトロポリタン美術館蔵)
オルコットの分身・二人の姉妹
ジョーという存在は、当時の社会が「こうあるべき」と強制する女性像に「ノー」を唱えたい、オルコットの本音の部分。
しかし彼女がそれだけを主張する作家であったなら、小説が21世紀の現在まで、読み継がれる深みを持つことはなかったでしょう。
オルコットはもう一人、エイミーという分身を描きました。彼女は円滑な人間関係を築き、社会秩序に敬意を表する「理性」の存在。
こうしてエイミーはヨーロッパに旅立ち、家族のもとに旅行日記を送ってきます。その内容は『若草物語』が書かれる少し前、オルコット自身の1865~66年のヨーロッパ体験がベースとなっています。
このとき、エイミーのモデルとなった末妹メイは、実は同行していません。つまり『続若草物語』が書かれた時点で、ヨーロッパを知っていたのは、オルコットだけなのです。
こうなると、ジョーと正反対の性格であるエイミーもまた、作者の分身であるといえると思います。
女性はどのように生きるべきか?(メトロポリタン美術館蔵)
オルコットの分身・二人の姉妹
ジョーという存在は、当時の社会が「こうあるべき」と強制する女性像に「ノー」を唱えたい、オルコットの本音の部分。
しかし彼女がそれだけを主張する作家であったなら、小説が21世紀の現在まで、読み継がれる深みを持つことはなかったでしょう。
オルコットはもう一人、エイミーという分身を描きました。彼女は円滑な人間関係を築き、社会秩序に敬意を表する「理性」の存在。
作者自身が「本音と建て前」をよくわきまえているのです。
だからこそ、二人のキャラクターが魅力的に描きわけられ、対照的なキャラである姉妹それぞれの言い分が、心に響くのだと思います。
※オルコットの日記の引用は、『ルイーザ・メイ・オールコットの日記 もうひとつの若草物語』ジョーエル・マイヤースン/ダニエル・シーリー編、マデレイン・B・スターン編集協力、宮木陽子訳 西村書店 2008年 からです。
「あなたはジョーか?エイミーか?」若草物語ファンの十海ひかり主宰マリッジサロンはこちら↓
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