婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

カテゴリ:次女ジョー > ローレンス夫妻

 エイミーの結婚相手のネタバレあります。

ローリーには見えていたこと

ヨーロッパから帰国したローリーは、すぐにジョーの家を訪ねました。妹のエイミーも帰国して、マーチ家とローレンス家は再会の喜びにわいています。

そんなタイミングで、ジョーがニューヨークでお世話になったベア先生が訪ねてきました。寂しかったジョーは大喜びです。

しかし彼女は、自分の気もちが「友情」以上のものだとは、まだ気がついていません。

そしてローリーもまた、ベア先生に無関心ではいられませんでした。

嫉妬というのではないが、
なにか疑いに似た
かすかな苦痛を覚えて、

この紳士
[ローリー]
初めてひとり
離れたところに立って、

兄らしい
細心の注意を払って
新来の客を観察していた。


ジョーが惹かれているベア先生について、少々ライバル意識もあったローリー。でもすぐにベア先生の温厚な人柄に惹かれていきます。


ローリーの結婚を知ってベア先生が喜ぶのはなぜ?


やがて皆が帰り支度を始めると、ローリーはこうベア先生に挨拶しました。

お目にかかれて家内も私も
たいへんうれしゅうございました。

すぐそこですから、
宅へもどうぞ
お越しくださいますように。

「家内も私も」に対するベア先生の反応はこうです。

すると先生は
心から感謝の意を表し、
急にうれしげに顔を輝かせた。

ローリーは彼のことを、
気持ちを隠すことは知らない
愉快なおじさんだと思った。


突然ジョーの家を訪ねたベア先生は、ローリーがすでに結婚していることを知りません。

なぜ、ジョーの幼なじみのローリーが結婚していることを知って、先生は喜んだのでしょうか。

オルコットの肖像
作者オルコットのポートレート。物語のジョーのモデルです。(ニューヨーク公共図書館蔵)

学者で博識なベア先生ですが「気もちを隠すことをは知らない」とローリーにあっさりと、恋心を見破られています。

でも好意から恋愛へ、そして結婚へと向かうためには、礼儀正しさや遠慮よりも、ときにイキイキとした感情を素直に出すことが、肝心になってくることがあります。

直情径行なジョーと、朴訥なベア先生は、どちらも社交下手で「すぐに顔にでる」タイプのようです。

それだけにお似合いのカップルになりそうな…先生が今は隠している気もちが、恋愛不慣れなジョーに伝わるといいのですが。

※小説の引用は『続若草物語』角川文庫 2008年 吉田勝江氏の訳からです。

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エイミーの結婚相手のネタバレあります。

妹夫婦は姉ジョーの結婚の行方が気になる

作家修行でニューヨークに滞在したジョー。そこで出会った親切なベア先生を、とても尊敬しています。実家に帰って、妹の結婚を知って寂しさを感じるジョーですが、突然のベア先生の来訪に元気を取り戻しています。

新婚カップルのローリーとエイミーは、このジョーの喜びようと、ベア先生が唐突にマーチ家を訪問したことについて「何かが起こりつつある」ことに気がついたようです。

自宅に戻ったローリーは、さっそく妻エイミーに「あの男はジョーと結婚するつもりなんだぜ」と話しかけます。それに対し、エイミーはこう応えました。

そうだといいと思いますわ。
あなたは?

それに対しローリーはというと、

うん、ねえ君、
僕はあのひとを
頼りになる男性だとは思うよ、

この適切な言葉の
あらゆる意味においてね…


過去にジョーを好きだったローリーは、ベア先生にちょっと不満です。

…でも僕はあのひとが
もう少し若くって、
うんと金持ちだと
いいと思うんだ


一家の柱となったローリー、なかなか現実的な意見を述べていますね。

それに対してエイミーは「そんなに選り好みをしてはだめ!」と応えます。

愛し合っている人たちなら、
どんなに年をとっていようと、
どんなに貧乏だろうと、
少しも気になるものではありませんわ。

女はお金のために結婚すべきでは―

ここまで言ってエイミーは、口をつぐんでしまいます。

幸せな結婚の条件とは?

実はエイミー、自分がイギリス貴族の青年と「お金目当ての結婚」を考えたことを思い出したのです。

ローリーはそんな妻をからかいますが、やがてまじめな口調でこう言いました。

かわいそうに、
普通の娘たちには
そういうことが
日常のことなんだ。

それが唯一の救い
であるかのように
教えこまれている。


『若草物語』が書かれた19世紀当時、経済的自立が難しい女性にとって「裕福な結婚」は切実な問題でした。

LA PROMENADEゲッティ美ルノワール1870
どんな相手とどんな関係を結ぶかで人生は大きく変わります。(メトロポリタン美術館蔵)

エイミーは結果的には望み通り(イギリス貴族ほどではないにしろ)資産家のローリーと結婚して「貴婦人」となります。

でもこの夫婦は愛し合い、互いに意見を述べ合う対等な関係で描かれています。

二人にそんな豊かさをもたらしたのは、エイミーの母マーチ夫人の教育でした。

…でも君は
もっといい教えを受けている。

僕も一時は
君に恐れをなしたが、
失望はしなかった。

君はお母さんの教えに
忠実だったからね。


マーチ夫人は第31話のアドヴァイスのように、世間的に申し分のない相手でも、娘が「幸せになれない」と見通せば、結婚をあえて勧めたりしません。

愛情や信頼関係は、数えられる金銭に比べれば、抽象的で漠然としたものです。しかしこれをベースに(体感している大人からも教えられながら)始めて他の条件を積み上げていけるのです。

エイミーの父親は、「あの子供たちはいかにもしあわせそうじゃないか!」と喜んでいました。マーチ夫人はこう応えます。

「ええ、あれは長つづきしますよ」

マーチ夫人は
船を安全に港にこぎ入れた
パイロットのように、
ほっとした面持ちで答えた。


こうして、妹夫婦と両親を心配させているのは、ジョーひとりとなりました。ジョーは想う相手とどんなふうに結ばれていくのでしょうか。

※小説の引用は『続若草物語』角川文庫 2008年 吉田勝江氏の訳からです。



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エイミーの結婚相手のネタバレあります。

 
姉ジョーの結婚を応援したい二人の会話

ニューヨーク滞在時に知り合ったベア先生をとても尊敬しているジョー。そしてその気持ちは、尊敬以上の何かになっていきそうです。

そんな姉を応援したい!新婚の妹エイミーは、夫となったローリーと何やら相談中。ローリーは、ベア先生が貧しいことが気がかりな様子で、なんとか助力できないかと考えています。

エイミーはこう応えます。

ジョーがすぐ見破って
こわしてしまいますわ。

お姉さまは
今のままの先生が
たいそうご自慢なんですもの。

昨日もね、
貧乏は美しいものだと思う
なんて言ってましたわよ。


そのノロケぶりに、やれやれと思うローリーですが、幼なじみに恩返しをする気もちでいっぱいです。

今は知らん顔して、
機会を待っていようよ。

その時がきたら、
あの人たちがなんと言おうと、
どっさりお返しをするんだ。


孤独だったローリーの子ども時代を明るくしてくれたジョー。ローリーにとって、今の幸福の恩人として、感謝をささげる存在となっています。

幸せの連鎖
子ども時代から始まる幸せの連鎖。

満たされたカップルは他人の幸せを願うようになる

「どっさりお返しをする」と言う夫に対し、エイミーはこう言いました。

気前よく他人に何かを
あげられるように
なりたいっていうのは、
私の夢の一つでしたの。


結婚によって、この夢がかなえられたと夫に感謝するエイミー。

経済的に恵まれないことで、体力や時間を浪費したまま、夢がかなわない若者のことを心配し始めます。かつての自分が、そのような境遇にあったから…

良いご縁が結ばれると、そのつながりはたくさんの良い連鎖を生んでいきます。満たされた二人は「他人を幸せにすること」を考えられるようになったのです。

妻に感謝のまなざしを向けられて、ローリーはちょっと得意。演説気味に、これからの人生を語り始めました。

莫大な遺産を遺して死ぬよりは、
生きている間に有効に使い、
それで同胞を
幸福にしてあげるほうが、
どれだけ、賢いかわからないんだよ。


かつてそれぞれに、自分の夢だけを追っていた二人がたどり着いた境地でした。

僕たちは自分でも楽しく暮らし、
他のひとたちにも
気前よくわけてあげて、

自分たちの生活を
いよいよ味わいのあるものに
しようじゃないか。


このような意気込みの妹夫婦のサポートによって、姉のジョーにも幸せがもたらされようとしていました。

※小説の引用は『続若草物語』角川文庫 2008年 吉田勝江氏の訳からです。



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