ジョーの結婚相手のネタバレあります。

ジョーの自己実現の旅の行く末は?

『若草物語』は今から150年ほど前の1868年、日本では明治維新の年に書かれた物語です。

作者オルコットが、自身の姉妹の様子を丁寧につづった物語は、当時の少女たちに熱狂的に迎えられました。そしてその興奮は、時間と空間を超えて、今も伝えられ続けています。

児童小説の翻訳家・谷口由美子先生は、そのパワーを「古典力」と呼ばれています。

なるほど本当に、21世紀の現在、日本という国で読んでも、19世紀当時のアメリカの女性たちの思いに共感できます。それだけ女性が直面する悩みには「普遍性」があるのだなあ、と実感されます。

そこにはいつも、世間が漠然と示す「こうあるべき女性像」と、どう距離をとり、折り合いをつけていくのか、そして自分の夢の実現のプロセスに、結婚や出産をどう位置づけていくのかという問題がありました。

小)An Interesting Story (Miss Ray)William Wood1806
いつの時代も女性たちは物語からたくさんのことを学びます。

『続若草物語』で、「自分は結婚しない!」とリキんでいたジョーは、物語の後半「誰かと人生を共にしてみたい」という気もちになって、そこでベア先生と出会って、結婚をしています。

肩の力が抜けたジョーは、そうして学校を開き、二人の息子に恵まれました。「この生活はとても自分のためになる」と感じているジョーです。

結婚によって、若い頃からの「作家になる」夢とは、どう折り合いをつけたのでしょうか?


『第四若草物語』で、売れっ子作家になったジョー

1886年、最初の若草物語から20年後に書かれた最後の『第四若草物語』で、ジョーは自分の夢をかなえていました!

そのきっかけは、学校は経営難、ジョーは健康を損ねていると状況を、打開するためでした。

そういう状態に
絶望的になって
自室にとじこもっていたとき、

ジョーはふと長いこと
使わなくなっていたペンを見て、

収入の不足を補うのに
自分が頼れるのは
これだけだと気がついた。

ジョーは少しでもお金になればと、小説を出版社に送ります。

…急いで書きあげ、
せいぜい二、三ドルになれば
と思って送りだした物語は、

順風と賢明な
パイロットのおかげで
大衆の支持の中へと直進し、

思いもかけぬ
黄金と栄光の積荷を
つんで帰ってきた。


ベストセラーになったのですね。

自分の小さな船が
旗をひるがえし、
いままで鳴ったこともない
砲声をとどろかせながら
港にはいってきたときの

ジョゼフィーン・ベアほど
どぎもを抜かれた女は
いなかったであろう。


長い物語も終わりにさしかかったとき、ジョーは、結婚とキャリアを、とうとう両立させたのでした。それはマーチ家の四姉妹の中で、いちばん世間とぶつかりがちだったジョーだけが、成し遂げたことでした。

中年となったジョーは、ゆるぎない存在感を放っています。

そして、かなわないと思える夢や、捨てたと思っていた希望も、思いがけないかたちで実現するということを、物語は教えてくれます。

自分から制限をかけて、勝手にあきらめてしまってはもったいない―全部を手に入れる!と思う自由はあるのです。


夢の実現の苦労と夫ベア先生のサポート

成功に喜んでいたのも束の間、マスコミやファンに追いかけられる日々に、自由を愛するジョーは、うんざりし始めます。夢がかなえば、それに伴う苦労もあるということです。

人生はままなりませんが、今のジョーには頼もしい味方がいます。

朝食の席でグチっていたジョーを、夫であるベア先生は、なぐさめてくれました。そうして仕事に出かけいくようです。

ジョーはこう思います。

女流作家の夫が
みなあのように
やさしい天使だったら、

みんな長生きして
たくさんの小説が
書けるでしょうに。


ジョーが巡り合ったパートナーは、妻が成功して忙しくしていることをイヤがったり、嫉妬しない、度量の大きい優しい人物でした。

ジョーは掃除をしながら、ベア先生を見送っているようです。

…夫のほうへ
羽ばたきを振ってみせると、
夫もまた
こうもり傘を振りまわして
それに応えながら
並木道へとおりて行った。


穏やかな日常生活の一コマですね。

コンコードの散歩道(NY)
作者オルコットの住んだコンコードの散歩道。(ニューヨーク公共図書館蔵)


『続若草物語』ブログの終わりに

読み返すたびに発見がある名作・若草物語について、好きな場面のこと、今だから感じられることについて綴ってきました。

末広がりの第88話で、このブログはおしまいにしようと思います。

生きていると、いろいろなことが起こりますが、やっぱり「結婚」っていいものですよ、と、この物語は感じさせてくれます。

作者オルコットは、55歳で亡くなりました。これから私自身が、オルコットの年齢を超えて、60代、70代そして80代と生き続けられるなら、この物語をまた、どんなふうに読むのだろうかと考えます。

私のブログを読んでいただきました方々に感謝をいたします。

どうもありがとうございました!

コメントもお寄せいただけましたら嬉しいです、お待ちしております。

オルコット生誕100年新聞記事(1932年)
オルコット生誕100年を記念した1932年の新聞の特集記事(ニューヨーク公共図書館蔵)

※小説の引用は『続若草物語』角川文庫 2008年 吉田勝江氏の訳からです。




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