婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

カテゴリ:細雪 > はじめに

婚期を逸したお嬢さまの行方はいかに?

「結婚に役立つ」名作文学の第2弾は、谷崎潤一郎の小説『細雪』です。オルコットの『若草物語』は、アメリカの〈四人姉妹〉のお話でしたが、今度は日本の〈四人姉妹〉が登場です。

物語に登場する蒔岡(まきおか)家の四人の姉妹は…

長女が鶴子(つるこ30代後半)、
次女が幸子(さちこ30代前半)
三女が雪子(ゆきこ30歳)
四女が妙子(たえこ20代後半)

物語は、極端に内気な三女・雪子と、活発で社交的な四女・妙子、この二人の婚活物語を中心に展開していきます。

『若草物語』の姉妹順であてはめると、雪子=ベス・妙子=エイミーとなり、キャラクターがぴったり合う感じで面白いですね。

灘伏見 (3)

雪子さんの状況については、こんなふうに描かれます。

幸子の直ぐ下の
妹の雪子が、
いつの間にか
婚期を逸して

もう三十歳にも
なっている
ことについては、

深い訳がありそうに
疑う人も
あるのだけれども、


今で言うならもう40歳ぐらいの感覚でしょうか、その訳はと言うと…

実際は
これと云うほどの
理由はない。


恵まれた上流家庭に育って、なんとなく月日が流れてしまった、雪子さんなんですね。

戦争中に描かれた、穏やかで贅沢な日常

谷崎潤一郎が『細雪』を発表したのは1943年の『月刊公論』誌上でした。

すぐに軍部から「内容が戦時にそぐわない」として、はや同じ年には、掲載が出来なくなります。しかし谷崎は小説を書き続け、戦後1946年の刊行でようやく日の目を見ることになりました。

戦時中の谷崎は、蒔岡家の四姉妹を通して、戦前の阪神間セレブリティの華やかな生活ぶりを描き出していきます。

空襲警報が鳴るなかでも、執筆を続けたというエピソードからは、執筆自体が、作家が戦争の辛い日々を乗り越える、営みだったのかもしれません。

だからでしょうか、特に劇的なドラマがなくても、延々と綴られていく『細雪』の日常の場面は、光り輝いて感じられます。

そして、戦争が終わって後も、伝統に彩られた豊かな生活は日本から永遠に失われてしまいました。

改めて小説の一部を読んでみましょう。

幸子の直ぐ下の
妹の雪子が、
いつの間にか
婚期を逸して

もう三十歳にも
なっている
ことについては、

深い訳が
ありそうに
疑う人も
あるのだけれども、

日常の大きな関心事が「婚活」であったという戦前の平和な時代

戦後に暮らしのスタイルが大きく変わっても、小説からはいつの時代も変わらない「人間の心の動き」を感じることができます。

とりわけ「婚活」にまつわる悲喜こもごもは、今も十分にリアリティを感じさせて、とても現代の婚活の参考になります。

雪子さんと妙子さん、これから二人はどんなパートナーと巡り合っていくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。




このままでは「もったいない」人のチカラになります

三女・雪子さんの身辺事情

名作文学のヒロインたちの行動から、婚活の知恵を学ぶ第二弾は『若草物語』に続き、日本の四人姉妹『細雪』です。

ベスのように極端に内気な雪子さん、美人で若見えしますが、未だ独身。

幸子の直ぐ下の
妹の雪子が、
いつの間にか
婚期を逸して

もう三十歳にも
なっている
ことについては、

深い訳がありそうに
疑う人もある
のだけれども、

実際は
これと云うほどの
理由はない。

今でこそ、30歳はまだまだ若いうちです。
でも昭和初期の日本では、当然結婚して子供がいても、おかしくない年齢。

「これと云うほどの理由はない」としながら、雪子が縁遠くなった原因はどうやら、旧家・蒔岡(まきおか)家のプライドにあるようです。

要するに
御大家であった
昔の格式に
囚われていて、

その家名にふさわしい
婚家先を望む結果、


なんだかいやな予感がしますね(^^;

初めのうちは
降る程あった縁談を、

どれも物足りない
ような気がして
断り断りしたものだから、

この対応、雪子が若いうちはよかったのでしょうが…

次第に世間が
愛憎をつかして
話を持って行く者も
なくなり、

その間に家運が
一層衰えて行く
と云う状態になった。

出し惜しみしているうちに、持っているリソースまで失ってしまうパターンですね。

細雪02HiCさん photo by HiC

箱入り娘過ぎてしまって

蒔岡家のプライドは、かつて船場(せんば)の豪商だったというところから来ています、「船場」とは、大阪府大阪市中央区の地域名ということで、大阪の大商人が経済活動をしていました。

没落したといえども豪商の末裔、蒔岡家の姉妹は、贅沢で華やかな暮らしを続けています。

その環境で育った雪子は、衣食住に関して、とても洗練された感覚の持ち主。

極端に内気なのに、目は肥えていて生活スタイルにこだわりがあるという…なんだかいかにも、結婚するには難しそうなキャラクターになっています。

この雪子、姉夫婦の家に同居して、パラサイトシングルを謳歌している状態。そして姉である幸子の目下の悩みは、なかなか嫁げない妹、雪子と妙子の「婚活」でした。

(ちなみに末っ子・妙子も姉夫婦の家に同居。当時のお嬢さまは働かなくても咎められません。姉妹三人、なんだか楽しそうに暮らしています。)

30代に突入した雪子には、これからどんな婚活ドラマが待ち受けているのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。



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