婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

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洋行前の忙しい時に

いつも雪子に縁談をもってきてくれた井谷。高級美容院の経営者である彼女は、最新の美容術を学びに渡米予定です。

恩義のある蒔岡家送別会の心づもりをしますが、そんな折、井谷が再び訪ねてきました。

翌日の朝、
貞之助が出て行ったあとで、

又何にしようかと
雪子と二人で
評定していると、
そこへ井谷が訪ねて来た。


井谷は雪子と姉の幸子にこう話します。

何しろ時間が
ございませんので、
孰方様へ上らないことに
致しているので
ございますが、

お宅様だけは
何だかそれでは
気が済みませんし、

ちょっと申上げたい
お話もございまして、


その話の内容が気になるところ (^^;

神戸はこれが
お別れだと思うと、
ほんとうに
お名残惜しゅう
ございます、

殊にお宅様は、
奥様にしろ、
雪子お嬢様にしろ、
こいさんにしろ、

こう申しては
失礼でございますけれども、

私の大好きな方々でしたのに、

井谷が橋渡しした縁談台無しにしている蒔岡家。また末っ子のこいさん・妙子は、不品行で蘆屋の社交界では評判も芳しくないはずです。

しかし井谷は、そんな姉妹たちを見限りません

そう云っても
蒔岡家の三人は、
めいめい特色が
おありになり、

似ているようで
それぞれ個性が
はっきりしておられ、

揃いも揃って
良い姉妹であられること、

当時の最先端キャリアウーマンである井谷は、かえって没落した旧家の姉妹たちに惹かれている様子。

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井谷の提案はというと

そうしてこう切り出します。

あの、もう神戸では
お目に懸れませんけれども、

出帆迄にはまだ十日程
ございますので、

もしご都合が
おつきになりましたら、
お三人で東京まで入らしって

下さいませんでしょうか、

上京を促す井谷ですが、「ちょっと申上げたいお話」と何か関連があるのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。




井谷のメンツがつぶれた縁談についてはこちらから

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何事もなかったかのように

蒔岡家の四女・妙子は、過去に「駆け落ち事件」まで起こした元カレの啓坊に貢がせていました。

三女の雪子は「新しい恋人がいながら、利用するだけ利用して」と、その姿勢を厳しく批判します。反論の余地がなくなると、妙子は泣きだし、家のドアを荒々しく閉めて立ち去るのでした。

成り行きを見ていた次女の幸子はこう感じます。

ひょっとすると
これから当分
来ないように
なるのではないかと、
密かに案じたが、

その明くる日の朝になると、
妙子は何事もなかったように
ケロリとしてやって来た。


二股かけていた妙子の図太さです(^^;

そして
少しもこだわらずに
雪子とも口を利き、

雪子も機嫌よく
それに応じた。


旧家の四姉妹は、このあたりさすがにお嬢様育ちです。
いつまでも事を荒立てません。

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元カレの就職話も立ち消えとなり

そもそもの姉妹の口論の発端は、本家から勘当された啓坊の就職先として(元カレを厄介払いしたい)妙子が、満州行きを熱心に勧めたことにありました。

その成り行きはというと、

奥畑のことについては、
満州行きは
止めにしたらしいわ、
と、妙子が云い、

そうか、と
雪子が答えただけで、

それ以後そのことは
孰方からも云い出さなかった。

蒔岡家の末っ子・妙子も30才近くで、相変らずの落ち着かない生活が続きそうです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



啓坊の満州行きの話はこちらから

細雪の物語の始まりはこちらから

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無言で泣くしかなくない妙子

本家から勘当されるほど、元カレの啓坊貢がせていた蒔岡家の三女・妙子

三女・雪子は、妹の身勝手な姿勢を理路整然と批判していきます。ふだんは内気な姉の思いがけない態度に、反論できない妙子でした。

雪子の口調は
何処まで行っても
同じように
物静かであったが、

妙子の眼には
いつの間にか
涙が燦然と浮かんでいた。

威勢よく「自立した女性」を標榜していた妙子ですが、どうにも形勢不利なようです。

それでも妙子は、
相変らず
無表情な顔つきをして、

頬を流れる涙を
意識していないかの
如くであったが、 


強情な感じで、最後までプライドを保とうとする妙子でした。

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妙子が立ち去った後で

そして、どうにも言い逃れできなくなると…

やがて、
突然立ち上ると、
バタン!と、

部屋じゅうが振動するほど
荒々しくドーアを締めて
廊下へ出て行った。

それからもう一度、
表の玄関のドーアをバタン!
と云わせる音が聞えた。


洋館のドア


何事かと蒔岡家のお手伝い達も驚きますが、姉の幸子と雪子はその場を取り繕います。

そして雪子はというと、

あのくらいなこと、
たまには
云うといた方が
ええねん

と、あとで幸子に
そう云っただけで、
もうその話は
忘れたように
していたので、

とうとう
その朝の出来事は、
悦子にも貞之助にも
感づかれないでしまった。

お見合いの席では男性にロクに口もきけない雪子の思いがけない一面でした。
このまま姉妹は、疎遠になっていくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



雪子が啓坊との関係を清算したがっている話はこちらから↓

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サンマリHPから お見合いNGあれこれ


姉の言葉に反論できない妙子

蒔岡家の四女・妙子は(過去に駆け落ちまでした)奥畑家の啓坊に、現在も随分と貢がせている様子。しかも姉たちには「頼っていない」と堂々とウソをついています。

姉・雪子はそれに対し、啓坊の婆やさんの示した領収証をもとに追及し始めました。

こいさん、
それ譃や
云うのんやったら、

何かそれに対抗する
帳簿のようなもの
見せてくれたら
どうやねん


妙子はというと「無言でじっと雪子の顔を見据えているばかり」です。

雪子はさらに続けます。

婆やさんの話やと、
そんなんはもう
何年も前からのことで、

洋服だけやあれへん、
あの時のあの指輪もそうや、
コムパクトもそうや、
ブローチもそうやと、

一つ一つ品物を
覚えてはって
云やはるねんわ。


貴金属販売

啓坊への依存がわかっていたなら

その気がないのに、啓坊を利用し続けていた妙子。関係を清算することを、雪子は勧めていきます。

啓坊が勘当されたのも、
こいさんのために
店の宝石を胡麻化したのが
原因や、云やはるねん

啓坊は素行を兄から疎まれて、勘当されていました(-_-;)

こいさん、
そんなに
啓坊との関係
断ちたい思うてた
のんやったら、

今迄にかて
何ぼでも
断てたやないの。

板倉の時かて
好え機会
やったのんに。………

板倉とは急死したカメラマンで、妙子の恋人のひとりでした。

そうかてあの時分、
縁切ることに賛成して
くれはれへなんだやないの。


板倉との交際を反対されていた妙子は不満げです。

これに対し雪子はというと…

あたし等は
啓坊と結婚させたい
思うたよってに、
賛成せえへなんだけど、


蒔岡家としては、家柄が釣り合う奥畑家の啓坊との結婚を望んでいました。

一方では
板倉とあんな仲に
なってながら、

一方では
啓坊を経済的に
利用してる云うことが
分ってたんやったら、
考えようもあってんわ


妙子のだらしなさは、旧家・蒔岡家としては見過ごせないところ。妙子と啓坊の結婚は「責任をとる」という様相を呈し始めました。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。

貢がせたあげくに縁を切りたがる妙子の様子はこちらから

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姉雪子の想定外の冷静さ

蒔岡家の四女・妙子はかつての恋人・奥畑家の啓坊に依存して遊び暮らしている様子。しかし姉たちに対しては、経済的に利用していないと堂々とウソをついています。

姉の雪子にその点を突っ込まれた妙子は、いまだこう反論しますが…

うちはあべこべに、
今に啓ちゃん養うて
行かんならん
思うてたぐらいやねん


啓坊の婆やさんから実情を聞いていた姉の雪子は「そんなら聞くけど」と追及を続けます。

その様子はというと、

雪子はなるべく
妙子の方を
見ないように
しているらしく、

テーブルの上の、
菊の花の挿さった
ガラスの一輪挿を
両手で弄びながら
続けたが、


極端に内気な雪子ですが、

…少しも
興奮している様子はなく、
声の調子は平生の通りで、

一輪挿を持っている
細い指先も
顫えを帯びてはいなかった。

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姉の本格的な追及が始まって

そして雪子は手始めに、妙子の高級なコートは、啓坊に買ってもらったものでは?と尋ねます。

それに対して妹は…

あれはあの時
云うたやないの、

あの勘定が
三百五十円
懸ったのんを、

薔薇の羽織と、
立枠と花丸の
衣裳を売って
払うたんやわ


姉の雪子は引き下がりません。

けど啓坊の婆やさんは、
あれは啓坊が
払うたげたんや
云やはって、

ちゃんと
ロン・シンの受取まで
見せてはるねんで


婆やさんからすでに情報が入っていると妙子に知らしめています。そうして、

それからあの、
ヴィエラの
アフタヌンドレスな、
あれかてそうやてな

あんな人の云うこと、
信用せんと置いて欲しいわ


姉の追及は続きます。

信用しとうは
ないねんけど、
婆やさんの方には
一々証拠の書付が
取ってあって、

それに基づいて
云やはるねんもん。

こいさん、
それ譃や
云うのんやったら、

何かそれに対抗する
帳簿のようなもの
見せてくれたら
どうやねん


ここまできて果して妙子は、何か証拠を示すことができるのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



妙子と雪子の言い争いの第一話はこちらから

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ウソがバレていると知らない妙子は

蒔岡家の四女・妙子は、かつての恋人・奥畑家の啓坊を利用しながら「経済的に自立している」と、姉たちに堂々とウソをついています。

啓坊の「婆やさん」から実情を聞いている姉の雪子は、妹にさりげなくこう尋ねました。

こいさん、
経済的にもいろいろ啓坊に
厄介かけてることが
あるのんと違う?

―こう云うたら何やけど、
お金のことでも
世話になってるのんと違う?


核心を突く質問に対して、妙子はというと…

阿保らしい、
そんなこと
絶対にないわ

ほんまかいな


姉のツッコミたいして、妹はまたお決まりのセリフを繰り返し始めました。

うち、
そんなことせんかて
自分の稼ぎで
やって行けたし、
貯金もしてたと云うこと、

雪姉ちゃんも
知ってるやないの 


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妙子は得意の洋裁でも収入を得ていると言っていました

姉の反論が始まって

姉の雪子はそれなら、その証拠が見たいと言い始めます。

こいさんは
そない云うけど、

世間では
そう思うてえへん人も
あるねんわ。

あたしかて、
ついぞ一遍も
こいさんの貯金帳や小遣帳
見せてもろたこともないし、

どれぐらい
収入あるのんか、
ほんまのことは
知らなんだし、………

姉の問いに直接は答えず、妹の妙子はこう切り返します。

第一啓ちゃんに
そんな働きがある
思うてるのんが、
間違いやわ。

うちはあべこべに、
今に啓ちゃん養うて
行かんならん
思うてたぐらいやねん


さんざん養われていた挙句の妙子の発言。
雪子はどのように論破していくつもりなのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



婆やさんの打ち明け話が始まる第一話はこちらから

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妹を信頼しすぎた姉の後悔

蒔岡家の四女・妙子は、かつての恋人・奥畑家の啓坊を利用しながら、別に恋人をつくっています。その新たな恋人・神戸のバーテンダー三好の影響か、妙子は泥酔することも多くなっている様子。

そんな妹の素行を聞いた姉の幸子は、衝撃を隠せません。
そしてこう感じます、

兄弟の力も借らず、
まして他人の
支持などには頼らず、

女の腕一つで
独立独行している
と云う妙子の言葉を、

努めてその通りに
受け取っていた
のであったが、

…それがやっぱり
身贔屓と云うもので
あったのか。


預金通帳
啓坊のお金で生活していた妙子でした

姉の煩悶は続く


経済的自立がウソだった上に、さらに妙子の姿勢には問題がありました。

…でも、妙子は始終
奥畑のことを
何と云っていたか。

まるで
経済的無能力者
のように云い、

世話になるどころか、
将来自分が養ってやらねば
ならぬ人間のように
云っていたではないか。


まるきり立場は反対でした (-_-;)

啓ちゃんの金などは
一銭一厘もあてにしない、

啓ちゃん自身にも、
なるべくそれには手を
着けさせないようにする、
などとも云ったことが
あるではないか。


啓坊は実家から勘当されるほど、お金を使い込んでしまったのが実情です。

あんな立派な口を利いたのが、
みんな世間や姉たちを欺く
方便だったと云うのであろうか。…


あまりにも堂々と妙子がついていたウソの数々

幸子は、このあと妹とどのように向き合っていくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



細雪ブログ第一話はこちらから

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新恋人の情報に驚くお春

蒔岡家の四女・妙子は、かつての恋人・奥畑家の啓坊を経済的に利用しきっている様子。啓坊の婆やさんは、妙子ひと筋な気もちを汲んで、彼と結婚してあげて欲しいと訴えます。

聞いていた蒔岡家のお手伝い・お春が驚いたのは、妙子に新恋人がいるらしい話でした。

婆やの話が
意外な方へ発展したので、

お春はぎょっとして、

「又好きな人が出来た」と云うのは
誰から聞き込まれたのか、
私は今日が初耳ですが、と云うと、

婆やさん曰く、

それは私も確かなことは
云えないけれども、

この頃若旦那とこいさんとは
よく痴話喧嘩をする、


啓坊と妙子のことですね。

そんな時に若旦那が
「三好」と云う名を口にして
嫌味を云っておられるのを、
たびたび聞いた、


この「三好」という新しい恋人は、神戸でバーテンダーとして働いている様子。

バーテン

妙子が大酒飲みであることもバレて

そして蒔岡家のお手伝い・お春は、妙子の意外な一面も知ります。

さすがに実家の姉たちの前では、一二合で止めている妙子ですが … 啓坊と一緒の時は、日本酒で七八合という酒豪でした (^^;

婆やさんの目撃談によると、

たまに何処で
飲んで来るのか、

ぐでんぐでんに泥酔して
奥畑に介抱されながら
帰って来ることがあり、

それが最近は
だんだん頻繁に
なって来ていた
と云うことです。


妙子ももう30前後の年頃、いい大人がいつまでもマズイ感じで年を重ねているようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



妙子と啓坊の関係第一話はこちらから





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