婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

タグ:婚活

満州への同行を渋る妙子

蒔岡家四女で末っ子の妙子は、過去に啓坊とは「駆け落ち事件」まで起こした仲。

現在の妙子は関係の清算をしたくて、啓坊に「皇帝のお附きで満州に行くこと」を熱心に勧めています。それを聞いた姉の雪子は「一緒に行ってあげたら」と提案しました。

妙子はいやな顔をします。

うち、今が
啓ちゃんと別れる
好え機会や思うねん

ああしてられたら、
いつになっても
今迄の関係
清算する云う訳に
行かんさかいに、

一人で満州へ
行ってくれるのんが
一番ええねん。


そういう妹に対して、雪子はこうなだめました。

あたし等何も、
無理にこいさんを
啓坊と結婚さそう
云うのやあれへんで。 


昔の仲のアフターフォローで、ともかくも一緒にいってあげたら、という姉のアドバイスでした。

それに対して妙子は…

満州くんだりまで
附いて行ったりしたら、

なおのこと、
別れられへん
ようになるわ


気ままな独身生活を謳歌している妙子には、どこまでも気の進まない話 (^^;

対して雪子もなかなか引き下がりません。

そやけど、
よう因果を含めて見て、

それでも分って
くれはれへなんだら、

その時逃げて
帰って来たかて
ええやないの


灘伏見

意見が平行線のままの姉妹

「外国まで行って嫌なら逃げ帰れば」とは、裕福な姉妹ならではの大胆な意見。これに対して、妙子はこう言い返します。

そんなことしたら、
勤めも何も放っといて
跡追うて来るに
極まったある


啓坊もまた苦労知らずのお坊ちゃまです。

雪子は続けてこう妹を説得します。

そらまあ
そうかも知れんけど、
今迄の義理考えたら、

別れるなら別れるで、
ちゃんと
尽すだけのことは
尽さんといかんやろ、


姉たちは、妙子がいまだ啓坊と、ずるずると付き合っていることを知っています。

しかし妙子はというと…

うち、何も啓ちゃんに
そないせんならん
義理あれへん


本当に「そんな義理」はないのかどうか、ここから雪子の反論が始まります。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。

娘の雰囲気と容貌はというと

医学博士・橋寺氏と蒔岡家の三女・雪子の縁談。義兄の貞之助は、橋寺氏の自宅まで訪問しますが、肝心の結婚話は盛り上がりません。

しかし帰りかけた貞之助を、橋寺氏は昼食に招きます。氏のひとり娘も同席した、高級レストラン・アラスカで、貞之助が受けた印象はというと…

娘は悦子より
三つ年上の
十四歳と云うことで、


「悦子」とは貞之助の娘のこと、

悦子に比べると
物言いなども
ずっと落ち着いて
大人びていたが、

それは一つには
顔だちから来る感じ
のせいもあったろう。

と云うのは、
女学校の制服を着て、
おしろい気のない顔を
しているけれども、


ノーメイクのまだ中学生です。けれども…

既に少女型でなく、
面長の、鼻筋の通った、
引き締まった
成人型なのであった。


すでに大人びた顔立ちをしているようです。

4937200_s

先妻の様子が偲ばれて

さらに貞之助はこう感じます。

そして橋寺に少しも
似ていないところを見ると、
母親似に相違なく、

母が相当の美貌
であったことも、

橋寺が
この少女に依って

今は亡き
恋女房の面影を
偲びつつあることも、

ほぼ想察することができた。 

再婚となる橋寺氏としては、残されたひとり娘と、雪子との相性が気になるのは当然のこと。

雪子が姪の「悦子」をかわいがっていることは、大いにプラスに働きそうです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



再婚となる橋寺氏の関心事は、娘と義母となる女性の相性です

サンマリHPはこちらから


婚期を逸したお嬢さまの行方はいかに?

「結婚に役立つ」名作文学の第2弾は、谷崎潤一郎の小説『細雪』です。オルコットの『若草物語』は、アメリカの〈四人姉妹〉のお話でしたが、今度は日本の〈四人姉妹〉が登場です。

物語に登場する蒔岡(まきおか)家の四人の姉妹は…

長女が鶴子(つるこ30代後半)、
次女が幸子(さちこ30代前半)
三女が雪子(ゆきこ30歳)
四女が妙子(たえこ20代後半)

物語は、極端に内気な三女・雪子と、活発で社交的な四女・妙子、この二人の婚活物語を中心に展開していきます。

『若草物語』の姉妹順であてはめると、雪子=ベス・妙子=エイミーとなり、キャラクターがぴったり合う感じで面白いですね。

灘伏見 (3)

雪子さんの状況については、こんなふうに描かれます。

幸子の直ぐ下の
妹の雪子が、
いつの間にか
婚期を逸して

もう三十歳にも
なっている
ことについては、

深い訳がありそうに
疑う人も
あるのだけれども、


今で言うならもう40歳ぐらいの感覚でしょうか、その訳はと言うと…

実際は
これと云うほどの
理由はない。


恵まれた上流家庭に育って、なんとなく月日が流れてしまった、雪子さんなんですね。

戦争中に描かれた、穏やかで贅沢な日常

谷崎潤一郎が『細雪』を発表したのは1943年の『月刊公論』誌上でした。

すぐに軍部から「内容が戦時にそぐわない」として、はや同じ年には、掲載が出来なくなります。しかし谷崎は小説を書き続け、戦後1946年の刊行でようやく日の目を見ることになりました。

戦時中の谷崎は、蒔岡家の四姉妹を通して、戦前の阪神間セレブリティの華やかな生活ぶりを描き出していきます。

空襲警報が鳴るなかでも、執筆を続けたというエピソードからは、執筆自体が、作家が戦争の辛い日々を乗り越える、営みだったのかもしれません。

だからでしょうか、特に劇的なドラマがなくても、延々と綴られていく『細雪』の日常の場面は、光り輝いて感じられます。

そして、戦争が終わって後も、伝統に彩られた豊かな生活は日本から永遠に失われてしまいました。

改めて小説の一部を読んでみましょう。

幸子の直ぐ下の
妹の雪子が、
いつの間にか
婚期を逸して

もう三十歳にも
なっている
ことについては、

深い訳が
ありそうに
疑う人も
あるのだけれども、

日常の大きな関心事が「婚活」であったという戦前の平和な時代

戦後に暮らしのスタイルが大きく変わっても、小説からはいつの時代も変わらない「人間の心の動き」を感じることができます。

とりわけ「婚活」にまつわる悲喜こもごもは、今も十分にリアリティを感じさせて、とても現代の婚活の参考になります。

雪子さんと妙子さん、これから二人はどんなパートナーと巡り合っていくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(上)』新潮文庫からです。




このままでは「もったいない」人のチカラになります

ジョーの結婚相手のネタバレあります。

ジョーの自己実現の旅の行く末は?

『若草物語』は今から150年ほど前の1868年、日本では明治維新の年に書かれた物語です。

作者オルコットが、自身の姉妹の様子を丁寧につづった物語は、当時の少女たちに熱狂的に迎えられました。そしてその興奮は、時間と空間を超えて、今も伝えられ続けています。

児童小説の翻訳家・谷口由美子先生は、そのパワーを「古典力」と呼ばれています。

なるほど本当に、21世紀の現在、日本という国で読んでも、19世紀当時のアメリカの女性たちの思いに共感できます。それだけ女性が直面する悩みには「普遍性」があるのだなあ、と実感されます。

そこにはいつも、世間が漠然と示す「こうあるべき女性像」と、どう距離をとり、折り合いをつけていくのか、そして自分の夢の実現のプロセスに、結婚や出産をどう位置づけていくのかという問題がありました。

小)An Interesting Story (Miss Ray)William Wood1806
いつの時代も女性たちは物語からたくさんのことを学びます。

『続若草物語』で、「自分は結婚しない!」とリキんでいたジョーは、物語の後半「誰かと人生を共にしてみたい」という気もちになって、そこでベア先生と出会って、結婚をしています。

肩の力が抜けたジョーは、そうして学校を開き、二人の息子に恵まれました。「この生活はとても自分のためになる」と感じているジョーです。

結婚によって、若い頃からの「作家になる」夢とは、どう折り合いをつけたのでしょうか?


『第四若草物語』で、売れっ子作家になったジョー

1886年、最初の若草物語から20年後に書かれた最後の『第四若草物語』で、ジョーは自分の夢をかなえていました!

そのきっかけは、学校は経営難、ジョーは健康を損ねていると状況を、打開するためでした。

そういう状態に
絶望的になって
自室にとじこもっていたとき、

ジョーはふと長いこと
使わなくなっていたペンを見て、

収入の不足を補うのに
自分が頼れるのは
これだけだと気がついた。

ジョーは少しでもお金になればと、小説を出版社に送ります。

…急いで書きあげ、
せいぜい二、三ドルになれば
と思って送りだした物語は、

順風と賢明な
パイロットのおかげで
大衆の支持の中へと直進し、

思いもかけぬ
黄金と栄光の積荷を
つんで帰ってきた。


ベストセラーになったのですね。

自分の小さな船が
旗をひるがえし、
いままで鳴ったこともない
砲声をとどろかせながら
港にはいってきたときの

ジョゼフィーン・ベアほど
どぎもを抜かれた女は
いなかったであろう。


長い物語も終わりにさしかかったとき、ジョーは、結婚とキャリアを、とうとう両立させたのでした。それはマーチ家の四姉妹の中で、いちばん世間とぶつかりがちだったジョーだけが、成し遂げたことでした。

中年となったジョーは、ゆるぎない存在感を放っています。

そして、かなわないと思える夢や、捨てたと思っていた希望も、思いがけないかたちで実現するということを、物語は教えてくれます。

自分から制限をかけて、勝手にあきらめてしまってはもったいない―全部を手に入れる!と思う自由はあるのです。


夢の実現の苦労と夫ベア先生のサポート

成功に喜んでいたのも束の間、マスコミやファンに追いかけられる日々に、自由を愛するジョーは、うんざりし始めます。夢がかなえば、それに伴う苦労もあるということです。

人生はままなりませんが、今のジョーには頼もしい味方がいます。

朝食の席でグチっていたジョーを、夫であるベア先生は、なぐさめてくれました。そうして仕事に出かけいくようです。

ジョーはこう思います。

女流作家の夫が
みなあのように
やさしい天使だったら、

みんな長生きして
たくさんの小説が
書けるでしょうに。


ジョーが巡り合ったパートナーは、妻が成功して忙しくしていることをイヤがったり、嫉妬しない、度量の大きい優しい人物でした。

ジョーは掃除をしながら、ベア先生を見送っているようです。

…夫のほうへ
羽ばたきを振ってみせると、
夫もまた
こうもり傘を振りまわして
それに応えながら
並木道へとおりて行った。


穏やかな日常生活の一コマですね。

コンコードの散歩道(NY)
作者オルコットの住んだコンコードの散歩道。(ニューヨーク公共図書館蔵)


『続若草物語』ブログの終わりに

読み返すたびに発見がある名作・若草物語について、好きな場面のこと、今だから感じられることについて綴ってきました。

末広がりの第88話で、このブログはおしまいにしようと思います。

生きていると、いろいろなことが起こりますが、やっぱり「結婚」っていいものですよ、と、この物語は感じさせてくれます。

作者オルコットは、55歳で亡くなりました。これから私自身が、オルコットの年齢を超えて、60代、70代そして80代と生き続けられるなら、この物語をまた、どんなふうに読むのだろうかと考えます。

私のブログを読んでいただきました方々に感謝をいたします。

どうもありがとうございました!

コメントもお寄せいただけましたら嬉しいです、お待ちしております。

オルコット生誕100年新聞記事(1932年)
オルコット生誕100年を記念した1932年の新聞の特集記事(ニューヨーク公共図書館蔵)

※小説の引用は『続若草物語』角川文庫 2008年 吉田勝江氏の訳からです。




「あなたはジョーか?エイミーか?」若草物語ファンの十海ひかり主宰マリッジサロンはこちら↓

若草物語ブログ第一話はこちらから

サンマリブログ「結婚に乾杯!」はこちらから

ジョーの結婚相手のネタバレあります。

ジョーもまた運命のパートナーに巡り合う

25歳の誕生日を迎えるころから人生に自信をなくしていたジョー。作家にもなれず、結婚もしないまま、実家暮らしで年をとっていくのかと、絶望的になっていました。

そんな時、ニューヨークで親切にしてくれたベア先生が突然訪ねてきます。ドイツ人の学者で、故郷では博識さで評価を受けていた学者でした。

ジョーはそんなベア先生をとても尊敬していました。ベア先生もまた、ジョーの個性や気の強さをよく受け止め、純粋な姿勢に惹かれていきます。

こうして二人は、年の差や貧しさを乗り越えて結婚しました。

かつて作家修行のため、ニューヨークに旅立ったジョー。そこでのご縁から、思いがけないタイミングで、ベア先生というパートナーと巡り合ったわけです。悩みながらも、立ち止まらずアクションを起こしていったことの勝利ですね。

ジョーの次なるアクションは、マーチ伯母さんの遺産の屋敷で夫・ベア先生と学校を開くことでした。

そうして5年の歳月が流れます。

若草物語挿絵四姉妹のクリスマス
四姉妹の少女時代から15年以上の歳月が流れました。(ニューヨーク公共図書館蔵)

結婚5年後のジョーが感じたこと

プラムフィールドの学校では恒例行事「リンゴつみ」が家族や生徒総出で開かれていました。

ジョーは、満足そうにこう言います。

私はもう自分のことを

「不幸せなふしあわせなジョー」だ
なんて言う必要はありませんわ。

私のいちばん
大きな望みが、
こんなに美しく
満たされたのですもの。

これに対して今はローレンス夫人となった妹エイミーがこう応えます。

でも、
お姉さまの生活は、
昔描いていらしたのとは

ずいぶん違うものに
なりましたわね。


ジョーがあれほど夢見ていた作家ではないことを、エイミーは心配したのでしょう。

でもジョーはこう考えています。

―あのころ私が
望んでいた生活というのは、
今から思えば、

利己的で寂しくって
冷たいものだったわ。

『続若草物語』を通して、作者オルコットは一貫して女性の「自立」や「自己実現」を肯定しつつ、そこに「他者を想い、与える気もち」の大切さがあることを説いています。

それによって個人の小さな幸せが、周囲の大きな幸せへと広がっていくのです。

ジョーはエイミーにさらにこう言います。

今だって、
いい本を書きたい
という望みは
捨ててはいないのよ。

でもね、私、もう少し
待てるようになったの。


ジョーは日々の満たされた暮らしから得られる手ごたえを感じています。

本を書くにしても、
今のような経験だの、

あんなふうな
さし絵だのがあれば、

ますますいいものが
書けると思うのよ。


「あんなふうなさし絵」とは、ジョーの目の前に広がるリンゴ園の光景でした。愛する家族や生徒たちが思い思いにお祭りを楽しんでいます。

30歳を過ぎたジョーは、自分は幸せだと言い切ります。

私はもうそんなこと
言う必要もないわね。

だって私が分に過ぎた
しあわせ者だっていうこと、

だれの目にも
明らかなんですもの。

オルコット肖像
作者オルコットのポートレート。彼女は55歳の生涯でした。(ニューヨーク公共図書館蔵)

ジョーの夢はまだまだ現在進行形!

『続若草物語』の長い物語も終わりに近づいてきました。

個性と野心を持て余し、ツライ目にあってきたジョーも納得のいく生活を手に入れたようです。

これを皮相的に読むと、女性の幸せはやっぱり結婚ということ?と思われてしまうかもしれません。

でも大丈夫。
オルコットは女性作家です!

そんな予定調和的な終わらせ方を、ジョーにはさせません。

『第四若草物語』で、ジョーは「すべてを手に入れた女」として登場します。

このブログの次回最終回、末広がりの第88話で、その後のジョーをお伝えしたいと思います。

※小説の引用は『続若草物語』角川文庫 2008年 吉田勝江氏の訳からです。




「あなたはジョーか?エイミーか?」若草物語ファンの十海ひかりの結婚相談所はこちら↓


サンマリブログ「結婚に乾杯!」はこちらから






ジョーの結婚相手のネタバレあります。

ジョーの新婚家庭はプラムフィールドのお屋敷

遠距離恋愛が続いていて、経済的にも結婚の見通しがたたなかったジョー。

しかしマーチ伯母さんが亡くなって、ジョーに大きな彼女のお屋敷を遺してくれたことで、事態が好転し始めます。ジョーは結婚したら夫であるベア先生と一緒に、そこで学校を開くことにしました。

それは「作家になる」という公言とは別に、彼女が長年心に秘めていた夢でした。
 
こうしてジョーは結婚しました。

要するに、それは全く
予想外な一年だった。

いろんなことが
つぎからつぎへと
思いもかけぬ速さで、

しかも快適に
起こってくるのであった。


運命の相手は「この人しかいない!」という感じでとても単純に決まりますが、そこから結婚までの変化は「思いかけぬ」ほど複雑でめまぐるしいものがあります。

それはもちろん、一人用のライフスタイルから二人用のそれへと、新しい世界を創造していくからですが、息がぴったりあったパートナーとの共同作業は、その過程も「快適」で楽しいものです。

まさに良い結婚の醍醐味ですね。

ジョーは自分でも知らぬまに、
と言いたいくらい、
いつのまにか結婚し、
李の園
(プラムフィールド)
落ち着いてしまった。

1860年代のウェディング


『若草物語』が執筆された1860年代当時のウェディングの様子。(ニューヨーク公共図書館蔵)


ジョーの結婚式はどんなふう?

『若草物語』から『続若草物語』へと、ジョーに共感しながら、一緒に物語の旅をしてきた読者は、ジョーの結婚式の描写がないことに、ちょっと物足りなさを感じたかもしれません。

しかし作者オルコットは、とても美しい結婚式のシーンは、〈長女メグ〉のために描きました。

三女ベスの死の直後の〈末っ子エイミー〉の結婚式は、死者に敬意を表して、パリの領事館でとても静かに行われています。その代わり、エイミーには華やかな交際のシーンを、作者は用意していました。

そして〈次女ジョー〉には、とても劇的なプロポーズのシーンです。

作者の周到な用意は、結婚する姉妹それぞれによって、結婚に至るだいじな節目の出来事を描き分けているのです。

また、『若草物語』の愛読者には、ジョーやエイミーの結婚式は「こんな風だったのでは?」と想像を膨らませたり、話し合ったりする楽しみをもらえますね。

ジョーはやがて、ベア学園という学校経営をしながら、テディとロブという二人の息子を持つことになるのでした。

※小説の引用は『続若草物語』角川文庫 2008年 吉田勝江氏の訳からです。


「あなたはジョーか?エイミーか?」若草物語ファンの十海ひかり主宰マリッジサロンはこちら↓





 

 

 



 

ジョーの結婚相手のネタバレあります。

サプライズプレゼントは伯母さんから


雨に濡れながら、とうとうプロポーズを受け入れたジョー。お相手は年上で貧しいドイツ人の先生、そしてこれからしばらくは遠距離恋愛です。

それでもジョーは、お互いが自分の役目を果たしながら、幸せに過ごしていきましょう、と力強く宣言します。こうして婚約者のベア先生は、遠い西部に旅立っていきました。

一年の間、
ジョーと先生とは
働き、待ち、
希望をもち、
そして愛した。

たびたび
会いもしたし、
膨大な手紙を
書きもした。


こんな二人を幼なじみのローリーは、昔からの茶目っ気でからかいます。

そのために
紙の値段が高くなった、
などと言ったのは
ローリーである。

ラブレター
今で言うならたくさんのラインのやりとり?(ニューヨーク公共図書館蔵)


しかし状況が好転しないまま、交際二年目を迎えたとき、あることが起こります。

裕福なマーチ伯母さんが亡くなり、姪のジョーにお屋敷を遺してくれたのです!かつてエイミーに資金援助をした伯母さんですが、ジョーのことも忘れていなかったのですね。

幼なじみのローリーは喜んで「屋敷を売れば莫大なお金になる」と言います。しかしジョーは家を売るつもりはありません。

長年の夢をかなえようと動き出すジョー

ジョーは屋敷をどうするか語り始めます。

私、男の子たちのために
学校をつくりたいと
思っているの。

りっぱな、楽しい、
家庭的な学校よ。

私がその子たちの
世話をして、
フリッツ

教えるの。

フリッツとは夫のベア先生のこと。家族はみな驚きますが、すぐに賛成をします。

ジョーのプランは実は昔から、あたためていたことでした。

私にもし
お金ができたら、

そして家にいなくても
いいような時がきたら、

家族の面倒を見なくてもよくなったら、と思っていたのですね

大きな家を借りて、
貧乏な母親のいない
寂しい子供たちを集めて、
世話をしてやり、

手おくれに
ならないうちに
楽しい生活を
させてやりたい
ものだって。


心に秘めていた夢は、たくさんの人とのご縁で、不思議に現実味を帯び始めていました。

ジョーはこう続けます。

適当な時期に
めんどうを見て
もらえないために、

堕落する子が
たくさんいるんです。

(中略)
ああ、私ほんとうに、
あのひとたちの母親に
なってやりたいのです。

コンコードのホーソンの家
コンコードにあるホーソンの家。マーチ伯母さんの豪邸もこんな感じ?(ニューヨーク公共図書館蔵)

幸せな結婚から始まる正の連鎖

先に結婚したエイミーがそうだったように、満たされた想いのある結婚は「私たちに何ができる?」と、自分たちの周囲幸せを広げようとしていきます。

個性が強かったジョーは、人間関係で誤解を受けたぶん、理解されないで孤立する子どもたちのことが気になっていたのでしょう。

ジョーはベア先生という、すばらしい理解者と巡り合うことで気持ちが安定し、社会貢献ができるようになりました。

それに、どうにも女の子らしさが苦手だったジョーにとって、学校を開いて男の子と生活できることは、個人的にも嬉しいばかりです。

ジョーも(エイミー同様)投げ出さないで毎日を丁寧に暮らし、たくさんの人とのご縁をつなぐうち、公私ともに幸せな生活を手に入れたのです。

その夜、
家族会議やら
希望やら計画やら、
いろいろと楽しい
夕べを過ごしたあとで、

自分の部屋に退いたとき、
彼女の心はしあわせで
あふれるばかりだった。

まだ婚約中のジョーですが、新しい世界が目の前に開き始めていました。

※小説の引用は『続若草物語』角川文庫 2008年 吉田勝江氏の訳からです。



サンマリHPから


「あなたはジョーか?エイミーか?」若草物語ファンの十海ひかり主宰マリッジサロンはこちら↓





 

 








ジョーの結婚相手のネタバレあります。

これまでの想いを語り合う恋人たち

愛する人に一目会おうと散歩に出かけたジョー。そうして街で先生と出会い、彼女はプロポーズを受けることになります。

返事はもちろん、イエスでした。

家路につく二人は、霧深い道を歩きながら、恋人同士の会話を楽しんでいます。

ここに来る以前に偶然、ジョーの詩を目にしたベア先生は、彼女の寂しい気もちがわかっていたと言いました。

私の心、
そのひとのことで
いっぱいでした。

行ってこう言っては
いけないでしょうか。

もしこれが
私のほしいものに比べて
あまりに貧しいもので
なかったら、どうか
受けとってください。


先生は、ジョーの愛が欲しかったのですね。

でも自分がそれに値するかどうか迷っていたのです。ドイツ人の先生は、ジョーよりずっと年上で、そして定職もなく貧しい暮らし

…生活の見込み
ありませんときに、
幸福なあなたのお家から

あなたをとっていく心、
私ありませんでした。


責任感のある先生は、大人として迷いました。

少しの学問よりほかに
お金もなにもない
貧乏なおじいさんのところに、

あなた
なにもかも捨てて
きてくださいと
頼むことできませんでした。


ジョーはそんなことは全然気にしない、と力強く応えます。

貧乏なことなんか、
ご心配にならないで。

私もう長いこと
慣れてしまって、
そんなもの恐ろしいと
思わなくなりました。


さらにジョーの力強い言葉が続きます。

愛する人のために
働くことが
幸福だということも
知っています。


傘の下のふたり
寄り添う二人のイメージはこんな感じ?(ニューヨーク公共図書館蔵)

自立した女性としての頼もしい返答

そうしてジョーらしく、先生の荷物をいくつか持ち、テキパキと自分のすべきことを語ります。

私だって
義務も仕事も
ありますのよ。

そういうものを
果たさないでは、

私もやっぱり
先生のためであっても
楽しいとは
思えないのですわ。


キャリアウーマン・ジョーの冷静な愛の言葉です。

ですから
ちっとも急いだり
いらいらしたりする
必要はないと思います。


ベア先生は幼い甥たちのために、しばらく遠い西部で働かなくてはならないのでした。

今で言うなら遠距離恋愛が始まるのです。
ジョーはこう言います。

あなたは
西部へいらして、
あなたのお役目を
なすってください。

私はここにいて
私の役目を
果たします。


そうして叡智ある言葉は続きます。

未来のことは
神さまの思し召しに
おまかせして、

私たちは
できるだけの
望みをもって
幸福でいましょうよ。


こう語るジョーは、あの溌溂としたジョー本来の姿に還っています。

女性は経済的に、男性に依存するのが普通だった19世紀当時、ジョーの真実の「独立宣言」は、この小説を読む、たくさんの若い女性の心を動かしたと思います。

ずっと「私は結婚なんかしない」と言っていたジョーです。

それは作家になりたい彼女にとって、当時のありきたりの価値観での生き方を避けたいということだったのでしょう。

ジョーにとって結婚は、着地点ではなく出発点です。

そして、ベア先生だからこそ、深い知性と広い包容力で、世間の常識にとらわれない、個性的で自立心旺盛なジョーの心をとらえることができたのです。

責任感のある大人どうしのカップルがこうして誕生しました。

ベア先生はこう言いました。

ああ、
あなたは私に
大きな希望と勇気を
くださいました。

私は
このいっぱいの心と、
からっぽの手よりほかに、
お返しするもの
ありません。

※小説の引用は『続若草物語』角川文庫 2008年 吉田勝江氏の訳からです。



サンマリHPから


「あなたはジョーか?エイミーか?」若草物語ファンの十海ひかり主宰マリッジサロンはこちら↓




















↑このページのトップヘ