ひとり娘との距離が縮まれば

医学博士・橋寺氏と蒔岡家の三女・雪子の縁談。この話を進めたい義兄・貞之助はある朝、約束もなしに相手の家に出向きます。歓待はされても、肝心の結婚については切り出さない橋寺氏。

しかし貞之助が帰りかけると、橋寺氏は(先妻の遺した)と一緒に「そこまでご一緒しませんか」と外に誘います。

貞之助の気もちはというと…

実はその娘を
余所ながらでも
見たいと思っていた
ところだったので、

左様ですか、
ではその辺まで、
と、
云わざるを
得ないことになった。


貞之助をタクシーに乗せて阪急の駅まで送るはずだった橋寺氏ですが、途中で「ちょっと降りませんか?」と提案します。

貞之助は、昼食に誘われたのだと気づきます。

ちょうど時分時なので、
アラスカへ
誘う気なのだと

察した貞之助は、

この「アラスカ」というのは、レストラン名。
現在まで続く老舗の高級店です。



橋寺父子との食事に応じる貞之助

以前にも、橋寺氏にご馳走になった貞之助としては…

今日も亦
饗応にあずかることは
重ね重ねで
心苦しいけれども、

この機会に
娘と親しんで
見たくもあり、


義妹の雪子にとっても、橋寺氏と結婚すれば娘になるかもしれない人物です。

こう云う風にして
だんだん交情が
深まるのは

願ってもない
ことであるので、

ままよと、
招きに応じてしまった。


こうしてレストラン・アラスカで、橋寺父子と過ごす貞之助でした。はたしてどんな印象を氏のにもったのでしょうか。

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※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。

道修町で橋寺氏と食事をした時の話はこちらから

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