婚活するヒロインたち 結婚に役立つ名作案内 「若草物語」「細雪」

名作文学のヒロインたちから現代に役立つ結婚の知恵を学びます。―いろいろあるけれど、最後には笑おう ― 次はあなたがヒロインです。

タグ:雪子と幸子

家柄は申し分のない男性だけど

30代も半ばになろうとする蒔岡家の三女・雪子。今度のお見合い相手は華族の子息の御牧 実(みまきみのる)氏です。

経歴はというと、親の財産頼みで欧米を遊学し帰国後も遊び暮らして現在無職 (^^; 道楽半分で始めた建築設計の仕事が軌道に乗りそうな矢先、戦争の影響を受けていました。

縁談を持ち込んだのは、いつもお世話になっている高級美容院経営者の井谷でした。

その井谷は、雪子の姉・次女の幸子にこう説明しています。

彼の周囲の人々が
彼のために心配して、

是非御牧氏に
細君を持たせたい
と云っているのである。 


周囲がヤキモキしているのは、雪子と一緒な感じです。

氏は本年四十五歳
だそうであるが、


今でも婚活で45才はかなり遅め (-_-;) 

外国生活が長かったのと、
帰朝後も独身生活の
気やすさに馴れて

家庭を作ろうと
しなかったので、


何やら今どきの人にもいそうなタイプですね。

カメラ兄さん

結婚相手として大丈夫?

親のお金を浪費しながら、海外に暮していた御牧氏ですが、

帰朝してからも
大分新橋赤坂あたりで
遊んでおり、

放蕩の味は知っている
らしいのであるが、

それも去年ぐらい迄で、
今日ではもう
そんなことをする
経済的能力が
なくなったらしい。

何やら四女・妙子の元カレ、啓坊に似ている気もします (^^;

お見合い相手はつまり無職な男性ですが、こうなると、御牧氏に将来性があるかどうかも大事なところ。しかし―

浪費するばかりで
殖やすことを
知らない人なので、

最早や大部分を
遣い果たして、
剰ますところ幾何もない
有様なのである。


贅沢好きという点では御牧氏と雪子さんは合いそうです。しかしはたしてこの二人、一緒になって大丈夫なのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



妹妙子の元カレ・船場のお坊ちゃま啓坊の話はこちらから

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いきさつを語る仲介者の井谷

極端な人見知りのせいで、蒔岡家の三女・雪子は、橋寺氏を怒らせ、縁談の「お断り」をされてしまいます。親代わりの姉・幸子は、さすがに怒りが隠せません。

そして破談を知った仲介者の井谷は、橋寺氏に直接事情を尋ねました。

何しろ
あの温厚な
紳士らしい人が
ひどく怒って、

あのお嬢さんは
失敬じゃ
ありませんか
と、

私にまで
喰ってかかる
始末なので、

これは
ただごとでない
と感じて、


その後、井谷が幸子に語った内容はというと…

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実は予兆があった今回の破談

井谷はこう話し始めました。

事件は
昨日だけでなく、

一昨日から
萌していたのである、

デートのお誘い電話に対応できず、橋寺氏を怒らせた雪子さん。実はその前日、家族顔合わせを兼ねた神戸観光で、すでに事件が起きていました。

その帰りに皆さんで
元町を散歩された時、

偶然橋寺氏と
雪子お嬢さんとが
二人だけになった
ことがあった、

それは出征軍人を送る
街頭行進か何かがあって、


このあたり、戦中という時代を感じさせます。

二人だけが
長い行列に遮られて

外の人達と
離れてしまった
のであったが、


実はその時に橋寺氏、雑貨店のショーウィンドウを目にします。そして雪子さんに、「一緒に靴下を見てもらいたい」と頼んでいたのです。

内気な雪子さんは、どんな対応をしていたのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



仲介者の井谷は雪子の内気さを好意的に解釈していました

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お詫びの電話をいれさせたくても

橋寺氏からのデートの誘いを断ってしまった蒔岡家の三女・雪子。妹の内気な性格に、理解のある姉の幸子さえも、今度ばかりは怒りを抑えることができません。

橋寺氏からの電話を切ってしまった、今となっては…

折返して
雪子に電話を懸けさせ、
無礼を詫びさせて、

今夕大阪へ
行かせるようにする。

改めてデートの誘いに応じるということですね。

―それが
この失錯を取り返す

一番良い方法
であることは

知れているけれども、

しかし如才なく謝れるなら、こんなトラブルにはなりません (-_-;)

どんなに説き付けて
見たところで

決して雪子が「うん」と
云う筈のないことなので、

それを
強行しようとすれば、

徒にお互が
不愉快を募らせ、

喧嘩別れになるのが
落ちである。


ここまできて姉妹喧嘩になっては、元も子もない感じです。

それにしても、雪子さん、内気な上に頑固という、いかにも大変そうなキャラクターですね。

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家族ぐるみの交際にも限界が

さらに姉の幸子はこう感じます。
たとえ、橋寺氏が今日をあきらめてくれたとしても…

では明日は
如何ですと
云われたら

何と答えるか。

雪子が厭なのは
今日だけでは
ないのである。


デートすらイヤでは、結婚は難しい。

もっとお互に
懇親を重ねて

気心が分るように
なってからでなければ、

厭であるに
極まっているのである。


もうすでに家族を交えて3回も、橋寺氏と会っている雪子さん、「もう少ししてから」と言っている間に、30代の時間もどんどん過ぎていきそうです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



前日までは順調に思えた橋寺氏との縁談

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雪子の気もちを確認する幸子

本日夜にお見合いを」と丹生夫人が電話で伝える、蒔岡家三女・雪子の新たな縁談

その会話の中で、丹生夫人は、過去の縁談について丹生夫人が怒っていることを幸子に伝えます。気にしていただけに、幸子は夫人の斡旋を断れないようです。

幸子は、お見合い当人の妹・雪子の気もちを確認します。

「どうずる?雪子ちゃん、―」
「……」
「まあ行ってみたら、……」
「中姉ちゃんは?」

30才過ぎて雪子さん、まだ一人で行動できません(^^;

あたしは
附いて行ったげたいけど、
あない云やはるよって
遠慮しとくわ。

親代わりの幸子は(判断の遅さからか)同伴を丹生夫人からやんわりと断られていました。

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夫の職場に連絡を入れる幸子

雪子は渋ります。

「二人ではなあ、……」
「そんなら、貞之助兄さんに
附いて行って貰おう。―」


と、幸子は雪子の顔色を
判じながら云った。

「―用事さえなかったら、
行ってくれはるよって、
電話かけて見ようか」


お気に入りの妹とはいえ、少々甘やかし気味の幸子。夫の職場に「急報で申し込んだ」と、電話を入れたようです。

急な知らせに貞之助はどう対応するのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



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見た目も問題ないようです

丹生夫人を介して入ってきた蒔岡家の三女・雪子の新たな縁談。ここまでの夫人の話を聞く限り、お相手・橋寺福三郎氏は、これまでになくいい感じのお相手のようです。

風采も立派で、
押出しが堂々としており、

先ず美男子と云えば
云える容貌であること、

等々のことが知れ、
案外条件が好いのであったが、

洋間の窓
雪子さん好みのモダンなお医者さまでしょうか

さらなる幸子の問いかけに…

しかし電話口での話が進むと、丹生夫人の説明は要領を得なくなってきます(-_-;)

年齢を聞くと、
多分四十五か六ぐらいの筈と云い、

娘の歳はと云うと、
たしか女学校の二年生ぐらいと云い、

外に女の兄弟は?弟や妹は?
などと問うても要領を得ず、


現代のマリッジサロン(結婚相談所)なら、条件的にすぐわかることですが…

両親のあるなしでさえが、
さあ、どうだったか知ら、
と云うような答なので、


以前に、義理の姉が持ち込んできた縁談で、痛い目にあった蒔岡家。

今回も仲介者の様子が、どうも心もとない感じです。果たして親代わりの幸子と貞之助は、この話を受けるのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



義理の姉の勢いだけのお見合い斡旋の話はこちら

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お相手のプロフィールがわかりました

丹生夫人から、井谷を通じて蒔岡家にもたらされた新しい縁談。雪子の今度のお相手は医学博士です。「本日の夜にお見合いを」という井谷の電話に戸惑う姉の幸子。

より詳しい情報を得ようと、丹生夫人に直接確認をとりました。

そしてわかったことは…

その人は
橋寺福三郎と云い、

静岡県の出身で、
兄が二人あり、

その兄たちも皆
医学博士であること、


お医者の家系のようですね。

タイプライター

ドイツに留学した
ことがあること、

住宅は大阪の天王寺
烏ケ辻に借家していて、

現在は娘と二人で
「ばあや」を使って
暮していること、


なかなかセレブな家庭のようです。

娘は夕陽丘女学校に
通っているが、

亡くなった夫人に似て
器量の美しい、
素晴らしい児であること、

唐突にもたらされた縁談、しかしこの橋寺氏、なかなかいい感じのお相手のような…

お相手の資産状況はというと

そんな次第で
兄弟たちが皆
相当な者になっており、

郷里での名家であるから、
財産もいくらか
分けて貰っている
ことと思うが、

岩田医院
昔の医院は門構えも立派です

当人も東亜製薬の
重役をしているので、

可なりの収入が
あるに違いなく、
生活は派手に見えること、

家柄も財産も、申し分ないような感じですね。雪子さん好みの「贅沢さ」もあるようです。この先、この降ってわいたような縁談に、蒔岡家は心動かされていくのでしょうか。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



以前のお見合い相手は財産がありませんでした

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急なお見合いセッティングなので

丹生夫人から、井谷を通じて、蒔岡家にもたらされた新しい縁談

雪子の新しいお相手は医学博士 亡くなった前妻との間に女の子がひとりいて、製薬会社の重役という人物です。

井谷から「本日の夜にお見合いを」という電話を受けて、姉の幸子は戸惑います。

直ぐにも返事を
聞きたそうに
云うのであったが、

まあ一二時間
待ってくださいと、

幸子は一と先ず
切って貰った。


これまで「とりあえず待ってください」という返事の遅さで、たくさんの縁談をフイにしてきた蒔岡家。無自覚なことが結果、対応の無神経さとなり、人の恨みもかっています。

それでも懲りずに、新しい縁談を持ってきてくれる井谷は、ありがたい存在です。

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電話が飛び交う雪子のお見合いセッティング現場

幸子のいつもの逡巡が始まって

井谷の電話を切り上げた幸子はこう感じます。

…雪子ちゃんはどう思う、
今日聞いて今日なんて、

私もああ云う
急勝は 寔
(まこと)
性に合わないのだけれども、

しかしあれから此方、
始終雪子ちゃんのことを
気に懸けていてくれる
井谷さんの親切は
感謝しなければならない


本当にその通りです (^^;

しかし話を姉・幸子から聞いた当人の雪子はこう希望しました。

電話でもよいから、
直接丹生さんの奥さんに
もっと委しく聞いてみて、


と雪子が云うので、


幸子は今度は電話で、丹生夫人と直接話を始めます。そしてわかったお相手の医学博士のプロフィールはというと … それはまた次回に書いてみたいと思います。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。


以前の井谷の活躍ぶりはこちらから

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お見合いのセッティングに入る井谷

世話好きな美容院経営者・井谷から、雪子に新たな縁談が舞い込んできました。

井谷はある日、幸子を知る丹生夫人と知り合います。

その夫人から、今は独身の「医学博士」の情報を得ます。前妻の間に女の子がひとりいて、ある製薬会社の重役をしている人物です。

井谷からこの縁談を聞かされて、雪子の姉・幸子はこう感じます。

丹生夫人と云い、
井谷と云い、

孰方も性急で
且実行力に
富んでいる方なので、

多分この話は
立ち消えになることは
あるまいと思っていると、


予想通り、井谷から段取りの電話が入ったようです。

この間の件のことで
丹生さんから電話があり、 

今日の午後六時に
嶋の内の「吉兆」と云う
日本料理屋まで、

私にお嬢さんを
お連れしてくる
ようにと云うことですが、
如何でしょうか。

お見合いは、その日のうちにというスピード感です。

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雪子の付き添いについての希望

そして井谷は(丹生夫人の意見として)同行は幸子の夫・貞之助でと希望します。

誰方か
お附き添いになるのなら
旦那様にして、
奥様は止めて戴きたい。

孔雀が羽を
ひろげたような方が
いらっしゃると、

お嬢さんの印象が
稀薄になるから
と云うことで、


派手な美貌の幸子は同席不可ということに … その本音は、意思表示がとにかく遅い幸子を、縁談の進行から遠ざける気もちがあるのかもしれません。

そしてやはり、意思表示の遅い幸子は、今晩のお見合いについて電話口で即答できずにいるようです。

※小説の引用は『細雪(下)』新潮文庫からです。



別のお見合いでもやらかしていた蒔岡家


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